認知症一次予防としての睡眠改善 それを企業がやる理由

更新日:2020年12月18日

第44回睡眠学会に参加しております

この機会に本当に科学的に最先端の睡眠リテラシーを共有しますね。 先日テレビで見た社内睡眠セミナーでは、睡眠に関連する物質名が誤って伝えられていました。一般の方の睡眠衛生向上に科学的な正確性は不要だと考えますが、わざわざ専門用語を用いるのならば、せめて正確であってほしいものです。 睡眠セミナー講師は睡眠学会員に依頼することをお勧めします。 もちろん弊社のプログラムはお勧めです。


ちょうど一ヶ月前は第92回産業衛生学会で、同じ会場(名古屋国際会議場)で企業展示を行ない、『ポピュレーションアプローチによる、集団SAS検査と睡眠向上セミナーの意義と効果』という発表をしました。

以前、弊社で行なったポピュレーションアプローチの睡眠時無呼吸症候群(SAS)スクリーニングをもとに、過小評価されているSASの発現率や行動変容を促す方法論、そしてそのイニシアチブを会社が取ることの重要性とその方法論をお示ししました。

なんと、共有していないことに今気付いたので、後日、アップしましょう。


余談ですが、会場の睡眠学会参加者に、ある演者が、 「不眠症になったとき、睡眠薬と認知行動療法、どちらを選びますか?」  と質問しました。このメンバーなら全員認知行動療法を選ぶと期待したのですが、ちょうど半々くらいでした。たいへん驚きました。


認知行動療法は欧米では不眠症治療の第一選択で、睡眠薬と比べて不眠症への治療効果が劣るどころか、睡眠の質や併存身体疾患の改善などではむしろ有利であることが証明されています。日本では悲しいことに保険診療が適用されないので、専門家から受けるためには数万円の自己負担額になるところが最大のネックかもしれないですね。諸外国の事情や有効性を熟知する睡眠の専門家でも選択するなら、医者から睡眠薬を出されてしまう非医療者はどうしようもないですね。


だからこそ睡眠薬がこのように日本で異常に処方されてしまっているのでしょう。睡眠薬を使用する場合でも、認知行動療法を併用することで睡眠衛生向上効果は高まり、睡眠薬を離脱できる(やめられる)チャンスも増えることが科学的にわかっています。効果があるとわかっていて副作用のない治療法に保険が使えないのは本当に残念です。

今日は睡眠と認知症に関する話題です。ちなみに睡眠薬と認知の関係については可逆的(飲んでいると認知機能が明らかに低下するが、飲むのをやめれば飲む前の状態に戻る)ではあるものの、その復活には1ヶ月以上飲めば1年以上を要することがわかっています。飲み続ければ認知症になるというわけではありませんが、飲んでいる間は認知機能に影響が出ていることは確実です。

睡眠と認知機能の関係についての学術的研究は古い歴史があり、睡眠時無呼吸と認知症の関係は1980年くらいから発表がありますが、さまざまな測定技術の発展によって、近年、多くのことがわかってきています。

睡眠不足で脳がゴミ屋敷に?!

アミロイドβとアルツハイマー型認知症の関係については聴いたことがある方が多いと思います。脳の中にアミロイドβというタンパク質が貯まっている状況とアルツハイマー型認知症は関係があることがわかっています。とはいってもアミロイドβが貯まると認知症になる、つまりアミロイドβの蓄積が認知症の原因であるということではないので、注意が必要です。とはいえ、治療効果の判定などにはたいへんよく使えます。


アミロイドが貯まってない状態がいいらしいことはまちがいないので、貯めないほうがいいんですが、どうしたら貯めないでいられるかということなんですね。脳はタンパクでできていますから、毎日タンパクを7gずつくらい入れ替えています。アミロイドβというのはそういう日々の脳の営みで生じる生活ゴミのようなもので、きちんと掃除してゴミを捨ててれば本来貯まるものではありません。


つまりアミロイドβが貯まっている状態は掃除不足を反映していて、アミロイドβだけが貯まっているんじゃなくて脳全体が散らかっている状態を示唆します。非医療者の方や医療者でもテレビタレント業などが主で科学的な思考に慣れていない方は、アミロイドβが認知症の原因と考えてしまいやすいんですけど、そういうことはわかってないし、アミロイドβをやっつける薬でも認知症は治らないので、どうやらアミロイドβだけを片付けてもダメで、脳全体を清潔にしておかなきゃいけないよ~ということだけがなんとなくわかります。

つまりアミロイドβは「脳の散らかり度」を表す指標としてはすごくわかりやすいねってことですよね。

だから脳の片付け度を測るときにも、アミロイドβが何をしてるかはよくわからないんだけれど、とりあえずアミロイドβが貯まってない状態までは片付けるという目標にしてもいいわけです。ひょっとしたらアミロイドβ自体はむしろあったほうが認知症にいいって可能性もあって、だからこそアミロイドβの蓄積がないのに認知症な人もいますが、少なくともアミロイドβが貯まっている認知症の人は治療効果が上がった場合にはその蓄積が減っていることが事実として知られています。


その大切な脳の掃除は睡眠中にのみ行われます。

オフィスの清掃も通常勤務時間外に行なわれることが多いので、そのわけはイメージできるかと思います。私たちの体のゴミ掃除は概ねリンパ系がやってくれているんですけれど、脳にはリンパの流れがないので、そのお掃除スタイルについては、ものすごく注目が高まっている分野です。


Glymphatic(グリンファティック:脳のリンパというような意味の新語)という言葉を最近、耳にしたことがある方もいるでしょう。寝ている間、CSF(脳脊髄液:脳の細胞外液で血液ではない)の量がぐんと増えて、動脈周囲腔を流れながらお掃除をします。睡眠不足による認知機能の低下やアミロイドβの蓄積とアルツハイマー型認知症の関係はこのお掃除不足で説明できるのではないかと考えられています。



実際にたった一晩の徹夜でアミロイドβは右脳海馬、傍海馬、視床下部に定着します。記憶や摂食におおいに関連するところですね。これは私見ですが、認知機能だけでなく徹夜するとやけにムラムラして性欲が増えたり、どか食いしたりしてしまいます。お酒を飲んで睡眠の質が下がるときも似たようなことが起きます。これも掃除問題なのではないか?と疑ってしまいます。