
ストレスチェックは実施するだけで、法定義務を果たせますが、せっかくなら企業のコンプライアンス遵守だけでなく、しっかり従業員の健康につなげたいものですね。
そこで、ストレス解説動画を作成しました。
クライアント企業では、この動画を視聴した従業員と個人面談やグループディスカッションを行って、よりよい働き方、健康経営につなげています。
※10分間の動画です。
【職業性ストレス簡易調査票23項目】
仕事のストレス要因、ストレス反応(心身の自覚症状)、修飾(緩和)要因からなる厚労省推奨質問紙。高ストレス判定に利用。
【ESS・AIS 16項目】
睡眠中は意識がないから、自分の睡眠をリアルタイムで評価することは不可能。国際的に妥当性の証明された臨床質問紙を使用。
【WHO-HPQ他 10項目】
具体的な睡眠習慣や社会的時差ボケ、プレゼンティーイズムをチェックしながら理想を知る。
調査結果
ストレスチェックの目的
ストレスチェック制度の目的は、自分のストレスレベルを定期的に自覚することと集団分析結果を踏まえた妥当な職場環境改善によって、従業員個人が自律的にリスクを低減させて、メンタルヘルス不調を未然に防止することです。
心陽では、集団免疫効果を更に一歩進めて、従業員のメンタルヘルス増進につなげ、組織の生産性向上を実現することを目指しています。

ストレスチェックの実施

2016年11月のサービス開始以来、心陽★ストレスチェックの受検率は100%です
事業者は1年以内ごとに1回、職業性ストレス簡易調査票を用いて、常時使用する労働者に同時期に実施します。
円滑な実施には、事業者、労働者及び産業保健スタッフ等の関係者が、制度の趣旨を正しく理解した上で、指針に定める内容を踏まえ、衛生委員会等を活用し、互いに協力・連携しつつ、より効果的なものにするよう努力していくことが重要です。
法令では、免疫不全者や高齢者、新生児などのワクチンを受けられない人々を集団免疫で守るのと同様に、メンタルヘルス不調で治療中のため受検の負担が大きい等の特別の理由がある労働者にまで受検を強要しないよう、労働者には受検義務を定めていません。だからこそ、安心して受検できるだけでなく、受検したくなくなる理由を排除し、自然に受検したくなる環境、つまりノーム形成に努めて、受検率を上げることが重要です。
ストレスチェックはメンタルヘルス不調の試験紙でも特効薬でもなく、むしろ社会的ワクチンのようなもの、まさにWRWB(生産性を高める、職場の健康好行動)そのものなのです。心陽では行動経済学のノウハウを用いて、受検率の最大化に注力しています。高ストレス者割合や平均点は、職場の健康を示すものではありません。職場の健康を最も反映するのは、その受検率です。

学術研究のオプトイン
個人情報の特定できない(匿名性を確保した)状態でのみ、調査結果を公衆衛生向上を目的とする学術的な研究等に利用する可能性があります。実際に研究を行う際は、本ホームページで研究計画と研究協力拒否のご連絡先を告知します。2017年の告知内容と研究結果をまとめた論文はこちらからダウンロードできます。

個人結果

ストレスチェックは健診同様、その後の行動変容が何より大切です
産業医面談は治療ではなく、科学的な検証は不充分で、実際、全国で受検者の1%も面談していません。
心陽では、ストレス判定に関係なく、従業員全員と産業医が面談を行ない、そのときに同意を得て、ストレスチェックや健康診断結果、勤怠表、目標管理シートなどを参照し、個人のマインドセットや行動変容を提案します。必要に応じて、心陽クリニックの医師として、適切な診療や医療機関の紹介を行います。
「はかる」「わかる」「かわる」個人結果

集団分析
集団分析は宝の山!

測定/分析
各従業員レベル
集団レベル
ストレスチェック制度のうち、従業員のWRWBの向上に、唯一確固たる科学的エビデンスがあるのは、職場環境改善だけです。
法定産業保健上、職場環境とは主に騒音、照度、温度、湿度などの物理的環境と作業スペース、作業姿勢などの人間工学的側面を指します。これは明確な数値として測定可能で、参照となる標準値が、法令やガイドラインなどで内外で制定されています。
一方、人間関係や働き方、組織風土などは、心理社会的環境と表現されます。(参考:生活習慣病学会誌掲載原稿)
1980年頃から、ストレスチェック制度の論拠となる、デマンドコントロールアイソレーションモデルやNIOSHモデルなどの心理社会的説明モデルが数多く、確立されてきました。
個人結果を「はかる」のあと、集団の現在とより好い状態、そのための具体的な環境改善が「わかる」分析のあと、実際に集団が「かわる」と成果が出ます。そのためには、個人結果の集積が集団に与える影響を物理的な濃度や会計指標など、組織レベルの尺度で見る【エコロジカル】か、集団が個人に与える影響を見る【コンテクスチュアル】という分析視点が必要です。
健康経営やデータヘルスは前述の通り比較的新しい概念で、公衆衛生専門職の領分です。個人結果から集団の性質を「わかる」真の集団分析こそ、心陽の強みです。
これまでは表の右上、個人結果の平均点や有所見率が用いられがちでしたが、集団の性質は示せません。
最適な体感室温の多様な11人の職場の室温を、平均の24.9度にすると、最適に感じる人はいず、暑いと感じる人が6人、寒いと感じる人が5人です。たとえば24度だと、最適3人、暑い3人、寒い5人です。26度以上の最適温を「寒がり」と定義する場合、寒がり率は45%ですが、10人が25度、1人だけ26度の場合、25.1度と高くなりますが、寒がり率は9%です。どちらが寒がりの集団なのでしょう?
この調査結果による環境改善策は、室内全体を一定に保つ高額な空調設備の導入ではなく、むしろ空調の設置場所や換気を活かした意図的な温暖差を利用した席の配置や、調節可能な服装、個人用の安価な冷暖房器具の追加などの工夫です。つまらない服装のルールの廃止や最適環境を伝えやすい関係づくりもいいですね。



心陽ではストレスチェックの結果を分析し、感覚的には多くの経営者が持っている、組織の心理社会的安全風土の醸成と上司による相互作用性ソーシャルサポートの重要性を科学的に証明することに成功しました。スリープチェックや法定健康診断とのクロス分析も承ります。
今後も未来の糧になるエビデンスを積み上げていきます。ともに社会に貢献するエビデンスを確立しましょう。
[GROUPING] 経営に直結する情報を引き出すための集団づくり(最重要ステップ)
人間の集団の健康課題を解決する最も合理的な経路を求める公衆衛生家の重要な地図が疫学調査、つまり、集団内の分布から集団の特性を読み解く過程です。すなわち、集団分析は公衆衛生家の真骨頂、最大の腕の見せどころです。ストレスチェックの集団分析は全社単位だけでなく、10人以上(個人を特定しないため)ならどんな単位で行ってもかまいません。
心陽のストレスチェックは事前に設定した大分類中分類の2段階の10人以上の集団と性別、職位別の単位で、以下の集団分析をデフォルトで行います。

企業ごとに独自に設定できるこのグルーピングが、心陽★ストレスチェックの最重要過程です。企業理念に合わせた「かわる」目的、その方向性を意識して、企業内の集団同士、同業他社等比較したい対象、可視化したい強みや課題、物理的環境、心理社会的環境などの集団特性をデザインします。
学術的な研究においても、このプロセスが一番大事です。適当に集めたデータをこねまわしても、合目的的な結論は得られません。
最初から、ストレスチェックで獲得したい成果を明確にして、最小の努力で最高の成果が得られるような、合理的なグルーピングをしてください。もちろん、公衆衛生学と臨床医療、産業保健の専門家がお手伝いします。

ストレスは私たちを助けてくれる存在
ストレスはパフォーマンスの栄養
ヤーキーズ・ドットソンの法則(Yerkes-Dodson's law)は、「ストレスがあるほど、作業は捗る」という法則です。
ストレスは医学的にはあらゆる刺激を、心理学的には覚醒を指します。
たとえば、「音楽を聴きながら」や「お気に入りの香りを嗅ぎながら」だと、仕事の効率が上がるというのは、聴覚や嗅覚に余計なストレスをかける効果です。
この「ストレスによるパフォーマンス向上効果」は、図のように単調な作業であればあるほど大きくなります。実際、毎日の仕事のうち、単調で簡単な作業って、けっこうありますよね? その単調さこそがストレスと感じてたかもしれないけど、だからいいんです。
ストレスは忌み嫌うべきものという解釈は全く筋違いなのです。

むしろ、「ストレスを悪いと思いこんでいる勘違い」こそが諸悪の根源かもしれません。
ストレスを悪いと思っている人(A)、思っていない人(B)、ストレスの大きい人★、小さい人☆の寿命を比べてみたら・・・
一番長生きするのは、ストレスを悪いと思っていないけど、ストレスの大きい人(B★)でした!
つまり、心理的によくないストレスは、ストレスを忌み嫌う思い込みが作っているようです。
もちろん、酸化ストレスや低酸素ストレス、炎症ストレスなど、身体にとって圧倒的に避けるべく良くないストレスはあります。




でも、大まかにはストレスを味方につけたほうが、仕事には絶対に有利です。
ストレスには、味方につけると得をするユーストレスとディストレス(心理的苦痛、心身社会的に好ましくない刺激、不健康リスクを高めるあれこれ)があります。
医学的または科学的にコントロールできるできるストレスは、医療機関でサクサク解決しちゃいましょう。
医療や科学でコントロールしづらいストレスは、もちろん会社ぐるみで心理社会的環境を整えることで最もミニマムになりますので、健康経営が重要なのですが、セルフマネジメントも重要です。
ディストレスが蓄積していくとき、頭の中が悲喜こもごも、いろんな感情で支配されて、いっぱいいっぱいになり、目の前の作業に没頭できなくなってしまいます。
これはストレスでパフォーマンスが高まりすぎて、浮いては消える雑多な感情を全部真面目に処理しようとしちゃっているので、一度、なにもかも放棄して、ぽか~んとしてみることをお勧めします。
ストレスの影響がパフォーマンスにマイナスの影響を及ぼす手前で、意識的にストレスを減らして、上手にやり過ごしていくと、どんどんストレスのパフォーマンス向上効果を高めていくことができます。
このバランス感覚がストレスと上手く付き合う鍵です。



簡単な仕事でも、複雑な仕事でも、パフォーマンスを上げるレベルから、不健康リスクを上げるレベルに変化する、絶対的なストレスの量が存在するわけではありません。
日々、上手にストレスリダクションを利用する訓練をしながら、耐用できるストレスのレベルを上げ、こなせる仕事を増やすことで、複雑な仕事を簡単な仕事に落とし込み、最終的に、他の誰にもできない特別な仕事においても、疲弊することなく、ゾーンに入って、トップアスリートが世界記録を樹立するレベルのとんでもないパフォーマンスを発揮することができるのです。
ワークエンゲージメントの状態で、楽しく、生産性高く働く人々のストレスレベルは始業から終業までうなぎのぼりに高まりますが、終業と同時にストンと低下、翌朝にはストレスレスの状態で出勤できます。一方で、仕事を楽しめない状態では就業中にストレスレベルは変わらないけど、就業後も変わりません。これが心理的苦痛の正体なのです、という研究は、こちらのコラムでご覧ください。

