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【睡眠健康経営セミナー】ご質問への回答 ②深夜業・交代勤務・夜勤

第98回産業衛生学会ランチョンセミナー19【睡眠健康経営】にいらしてくださった皆様、誠にありがとうございました。

また、会場にいらっしゃらなかった方も、オンデマンドで楽しめますので、どうぞご視聴くださいませ。


本日はご質問への回答第2弾、まずは、西川株式会社からいただいた丁寧な回答をシェアしますね!


睡眠改善には実態把握が大切だと思います。goomoではどのようにして、睡眠の質を計測するのでしょうか?


goomoではスマホの加速度センサーを利用して睡眠中の体動から心拍や呼吸を測定し,それを元に機械学習を利用して睡眠の状態を測っております。また弊社の圧電センサー内蔵マットレスと連携することで,さらに高精度の測定を行い睡眠時無呼吸症候群のリスクや,自律神経の状態なども計測しています。


深夜業に従事されている方に特化した寝具はありますか?


西川㈱では、深夜業向けの方のみという形では発売しておりませんが,深夜業の方々の睡眠課題に対応した製品・サービスもご用意しております。

深夜業務の方は日中に睡眠をとられるため、光や温度変化に影響を受けやすい環境でお休みになることが多いと存じます。

そのような状況では、「エアー」シリーズのような体圧分散性と通気性に優れたマットレス等の敷き寝具に、季節によってはこれからですと涼感タイプの「敷パッド」などの温度調節機能を持つ寝具を組み合わせることをお勧めいたします。

これにより、熟睡をサポートし、限られた睡眠時間でも質の高い休息を得ることが可能です。

また、主睡眠を補完する意味で お仕事の合間の休憩時における15分~20分ほどの仮眠もオススメです。短時間でも効果的な疲労回復につながります。

そのような仮眠をサポートするグッズや弊社独自の睡眠の知見を生かした仮眠スペース(ちょっと寝ルームⓇ)を企業様向けのご提案もございます。

さらに、全国約120箇所にある弊社の「ねむりの相談所Ⓡ」では、スリープマスターが常駐しており、ご予約制ですが、お客様の生活リズムや体質に合わせた睡眠環境の診断を行い、最適な寝具の組み合わせをご提案しております。

深夜業特有の睡眠の悩みについても、専門知識に基づいたアドバイスをさせていただきます。

お客様の大切な睡眠をサポートし、心身の健康維持にお役立ていただける製品やサービスをご提供することが、弊社の役割でもございます。

ご不明な点がございましたら、弊社又は「ねむりの相談所Ⓡ」までお気軽にご相談ください。

西川株式会社さま、ご回答、どうもありがとうございました!!



深夜業・交代勤務の睡眠課題をどう解決するのか?


深夜業・交代勤務についてのご質問を、ほかにもいただいております。

正直なところ、交代勤務、深夜労働に関するご質問で、私は一番、回答に苦しみます。とはいえ、西川株式会社が回答してくれた以上、この話題に触れるのが筋でしょう・・・・・・


睡眠の生理は体内時計や自律神経にプログラムされており、意志の力でどうすることもできないという特徴があります。

社会的な事情で、日照日没や体内時計に反したリズムで生活を送らなければいけないとき、私たちはどう、生物としての時計と社会人としての時計の時差を合わせていけばよいのでしょうか?

その答えは科学的に、全く見つかっていません。


昨日のコラムで紹介した研究では、飛行機のフライトのように目的地に着くまでに10時間程度の連続勤務を要する業務の場合は、始業の6~8時間後に休憩することで、認知機能の減衰速度を緩和できる期待が持てますが、その後の回復のための睡眠や翌日の勤務については論じられていません。


体のしくみは努力や気合では変えられません。心頭滅却しても火は熱いです。

昭和最後の年、1988年に放送されたリゲインのCMコピー【24時間働けますか?】は昭和世代の誤った働き方の象徴として取り上げられますが、令和にも、【睡眠時間を削って戦う人へ】なんてコピーがあります。

労働は戦いではありません。従業員は戦士ではありません。


たとえばアスリートは今、いかにトレーニングの効率を高め、休養や睡眠の時間を十分に確保するかに注目しています。科学的知見を取り入れたライフマネジメントが主流です。

ランチョンセミナーでは、システム1に響く最良の睡眠キャンペーンとして、大谷翔平さんの例を挙げました。血の滲むようなトレーニングよりも、「最適で十分な睡眠」のほうが夢の実現に近づくのです。


経営者はどうしたら眠らなくても従業員が死なないかではなく、どうしたら従業員を大谷翔平さんのようにたっぷり眠らせてあげられるだろうかを考えてください。


石田先生へご質問です。交代勤務者や夜勤者への睡眠衛生指導に関しては何か意識されてることはありますか?


これは、ご質問に救われました。なぜなら、交代勤務者や夜勤者の睡眠課題の解決策ではなく、私の意識を尋ねてくださったからです。


診療ではなく、睡眠衛生指導については、なるべくユニバーサルな助言から始めていますので、1日1回、昼寝はしないでとにかくたくさん寝ることを第一にお伝えします。これは、どのような勤務体系の方に対しても同じで、特別に意識していることはありません。


それに対し、具体的なご質問が出てきた場合には、都度、対応します。私は臨床家であると同時に公衆衛生家でもありますので、社会的な条件と身体的なプログラムとの折り合いについて、経済的な実現性も含め、できるだけリアルにお答えしています。


ランチョンセミナーでは、私が主治医として竹林先生に対して行った指導を、座長の浜口先生が、社会的処方 Social Prescription と表現してくださったのは嬉しかったです。

もし、働き方によって睡眠衛生が保てない場合、最高の社会的処方ができるのは、私たち医療者ではなく経営者です。


くれぐれも従業員は経営者のために命を削って戦う戦士ではありません。深夜に働き、生体リズムに反する生活でまさに業務に起因する健康被害を従業員が起こさなくて済むような働き方の設計をお願いします。

それは、9時始業18時終業がベストなわけではなく、生まれながらのクロノタイプでは、いわゆる深夜業のスタイルに最もパフォーマンス高く働ける人々もいます。


多様なクロノタイプや睡眠覚醒リズムに合わせた働き方を提供することこそ、クロノロジカル健康経営だと言えそうです。


職種によっては毎日安定した時間確保できないことや睡眠開始時間がバラバラになりがちです。つまり、いわゆる一般的なコントロールは不可能な場合です。そう言った場合、睡眠へのアプローチはどのように介入すべきでしょうか。


こちらのご質問も、働き方が不規則な場合を指していると思います。

社会の時計は24時間周期で、多くの仕事の就業時間が社会の時計に合わせて、24時間周期です。ご質問にある「いわゆる一般的なコントロール」が可能な勤務時間というのは、24時間周期の勤務時間を指していると考えます。


実は私たちのサーカディアンリズムは一様ではなく、多様です。私たちのサーカディアンリズムは平均すると24時間より少し長く、個人ごとに数十分単位のズレがあるため、誰もが毎日、社会の時間に体内時計を合わせ直しながら生きています。


昨年1月、睡眠の時間より規則性のほうが全死因死亡やがん死亡への影響が大きいというオーストラリアの研究が発表されました。この規則性は、社会の時計で測定されました。

とにかくたくさん寝ること以上に、毎日同じ時間に規則正しく寝ることは難しいです。

もちろん、たくさん寝る習慣のある人のほうが規則正しい睡眠を取っていることも確認されて、睡眠時間が8時間近くまでは、とにかくたくさん寝ることで、自然に規則正しくなるという関係がわかりました。


海外渡航時の時差ボケは誰もが経験したことがあると思いますが、自分のサーカディアンリズムの1周期に1度、規則正しく8時間程度の睡眠を取らないと、時差ボケを発症し、健康に悪影響が出ます。


どのようなスケジュールで働いている方でも、私の指導は同じで、睡眠負債がないと仮定して、起床後16時間以内に仕事を終えることです。そのため、長時間連続して仕事をする人には、できるだけ始業のギリギリまで眠ることをおすすめしています。もし、職場とベッドが離れている場合は、引っ越しをおすすめします。まあ、引っ越しは極端で、多くの人々が、せっかく購入したマイホーム、家族のもとに帰りたいと思うのだけれど、その、愛する家族と長く人生をともにするためにも勤務前日だけでも職場近くに泊まるといった投資も、ぜひ選択肢として考慮してほしいのです。


そして、睡眠負債のない状態を維持するために、平均して1日に8時間以上は眠っている状態を維持することです。

24時間連続覚醒した場合は、次の24時間に合計16時間以上になるように眠ってほしいです。規則性は失われますが、科学的知見を考慮しても、時間の確保のほうが優先です。

たとえば、朝の5時から翌朝5時まで連続覚醒した場合、5時から正午まで7時間と、20時から翌5時まで9時間眠っていただく、というようなスタイルです。


高度専門性が地球規模で不足している急性期臨床の世界では、時差とオンラインを活用し、専門的知見をグローバルにシェアするTele-ICUのようなしくみがありますが、運転などのローカルな仕事は、そうもいきません。

そんな運送会社での取り組み例を紹介します。


🚢 フェリー輸送による長距離輸送の効率化


鈴与株式会社は、フェリー輸送を積極的に導入し、長距離輸送の課題解決に取り組んでいます。

関東~九州、関東~北海道など、日本全国の航路に対応。

トレーラーの荷台部分(シャーシ)のみをフェリーに乗せる無人航送を実施。ドライバーは「集荷先~乗船港」「下船港~配送先」までの輸送を担当し、フェリー乗船中は休息時間として活用。

  • 効果

    • ドライバーの労働時間短縮と休息時間の確保。

    • CO2排出量の削減(陸上輸送と比較して約40~75%削減)。

    • 輸送品質の向上(海上輸送は振動が少なく、貨物への影響が軽減)。

このような取り組みにより、鈴与株式会社は2024年問題への対応やGHG削減への貢献が評価され、国土交通省から表彰を受けています。


⚖️ 法令上の取り扱い:フェリー乗船時間の休息時間化


厚生労働省は、2015年9月1日付で通達を改正し、トラックドライバーのフェリー乗船時間を原則として全て休息時間とする取り扱いに変更しました。

  • 改正前:乗船時間のうち2時間を拘束時間、残りを休息時間として扱っていた。

  • 改正後:乗船時間全体を休息時間として扱う。

この改正により、フェリーを利用する運送会社は、ドライバーの拘束時間を削減し、法令遵守が容易になりました。 


🛳️ その他のフェリー輸送を活用する運送会社


関光汽船株式会社は、グループ会社である阪九フェリー、新日本海フェリー、東京九州フェリー、オーシャントランスと連携し、北海道から九州までのフェリー輸送ネットワークを構築しています。

  • 特徴

    • 約2,000台のトレーラーを相互使用し、効率的な輸送を実現。

    • フェリー輸送を活用することで、ドライバーの労働負担軽減と輸送品質の向上を図っています。


🚛 毎日自宅で眠れる「乗り換え戦略」


🚛 センコー株式会社:TSUNAGU STATION 浜松


センコー株式会社(本社:大阪市北区)は、静岡県浜松市に「TSUNAGU STATION 浜松」という中継輸送専用の大型施設を運営しています。

  • 特徴

    • 新東名高速道路・浜松SAスマートインターチェンジから約1kmの距離に位置し、関東と関西の中間地点にあります。

    • トレーラー交換やドライバーの乗り替わりが可能で、長距離輸送を複数のドライバーで分担する中継輸送に対応しています。

    • 2025年2月1日からは、貨物の積み替えや一時保管、配達代行サービスも開始しています。

    • ドライバー専用の休憩施設(休憩スペース、自動販売機、トイレ付シャワールームなど)も完備されています。

この施設を利用することで、東京と大阪間の長距離輸送を効率化し、ドライバーの労働時間短縮や労働負担軽減が期待されています。


🛣️ コネクトエリア浜松:遠州トラック株式会社とNEXCO中日本の共同運営

また、遠州トラック株式会社とNEXCO中日本が共同で運営する「コネクトエリア浜松」も、浜松市にある中継輸送拠点です。

  • 特徴

    • トレーラー交換やドライバーの交代を行う中継輸送に対応しています。

    • 長距離運行を複数のドライバーで分担することで、各ドライバーが日帰りで勤務できるようになる仕組みです。

    • 労働時間短縮や労働負担軽減など、働き方改革に繋がる取り組みとして注目されています。


このような中継輸送拠点を活用することで、運送会社は効率的な輸送体制を構築し、ドライバーの労働環境の改善を図っています。


外泊のほうがよく眠れる、という方は存在しないと言い切ってもいいのではないでしょうか?


運転手の専門性を活かすことと、毎日自宅で眠れることを両立したこの中継点乗り換え戦略は、非常に賢い社会的処方といえるのではないでしょうか?


本日は、西川株式会社と合わせ、4つのご質問に回答しました。

残り11のご質問には、明日以降、回答します。


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