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花粉症と生産性【プレゼンティーイズム②】

Yoko Ishida

東京で統計史上“最早”「スギ花粉」飛散開始


1985年の統計開始以来、この40年で最も早く、1月8日にスギ花粉が飛び始めました。 タイプするだけでも、目が痒くなって、鼻もムズムズしてきます。 皆さん、一刻も早く、服薬を開始してください、とお勧めするわけを説明します。


花粉症有病率、10年ごとの変化
花粉症有病率、10年ごとの変化

グラフのように、私が大学生だった1998年には、30代、40代に多いといっても4人に1人程度だった有病率は、全員10年経っても治らないどころかほんのり増えながら、どんどん若い層に有病率が増え、今や20代から50代まで2人に1人のレベルまで有病率が増加して、まさに国民病です。


当然政府も花粉症対策に力を入れています。有病率が多いといっても命に関わるわけではないのに国が対策に乗り出すのはなぜか、それはズバリ国益を揺るがす大問題として、生産性が落ちるからです。


健康経営優良度調査のチェック項目にあるため、「花粉症(薬の飲み方、副作用への理解等)」セミナーを依頼されることが増えましたが、働く成人にとって花粉症で最も辛いのは、『生産性の低下』ですし、健康経営という文脈でも本来注目するべきは薬の副作用ではなく、生産性を保つ方法ではないでしょうか。


ある患者は、在宅勤務だと外部との交通が限られるため、症状も少ないし、症状が出ても、気兼ねなく鼻がかめるけど、出勤するとそうはいかない、と話してくれました。たしかに、モラルある皆さんは、職場で豪快に「ちーん」とはかみにくいですよね。後述する調査でも、全体で4.9%の方が、花粉症対策として在宅勤務を選択しています。


花粉症による経済損失、1日あたり2340億円


パナソニックの調査によれば、花粉症で労働力が低下することによる経済損失は、日本全体で1日に約2340億円にものぼります。


花粉症による労働生産性低下の予防策として、政府レベルでは発生源や飛散に対する作業環境管理に力を入れてくれています。企業ができる作業環境管理としては、空気清浄機の設置や在宅勤務の推奨があるでしょう。私たちが個人でできる作業管理がマスクやメガネなどの保護具の着用です。

でも、最も簡単で効果の高い対策が健康管理、つまり内服です。


抗ヒスタミン薬投与の有無による労働生産性の比較
抗ヒスタミン薬投与の有無による労働生産性の比較

大久保先生の研究によると、図のように、アレルギー性鼻炎の患者に花粉症治療薬のオマリズマブ(抗IgE抗体薬)を使用すると、生産性の低下が有意に予防できました。


症状があるときのないときと比較した仕事の効率の割合(左)と生産性に影響与える具体的な症状(右)
症状があるときのないときと比較した仕事の効率の割合(左)と生産性に影響与える具体的な症状(右)

上記の生産性研究にも携わった岡野先生が監修したノバルティスファーマが20代から40代の男女2000人を対象に行なった調査では、87.5%が花粉症症状で生産性の低下を自覚しています。

具体的にどんな症状が生産性を阻害しているかというと、鼻水、鼻づまり、目のかゆみが上位にくるのは予想通りでも、睡眠不足、体のだるさ、頭痛という花粉症特有とはいえない全身症状、不定愁訴による影響が非常に大きいのです。


日本のプレゼンティーイズム原因ランキング
日本のプレゼンティーイズム原因ランキング

睡眠不足や頭痛は、アレルギーとは独立して主要なプレゼンティーイズム原因の一つで、睡眠と頭痛に大いなる関係があることはコラム「頭痛と睡眠【プレゼンティーイズム①】」で取り上げたとおりです。

睡眠と花粉症に焦点を当てると、おそらく花粉症治療薬の第一選択薬である抗ヒスタミン薬の「副作用としての眠気」をイメージする方が多いと思うのですが、調査結果を見てみると、花粉症の症状が辛くて眠れない、それで睡眠不足になって生産性が下がってしまうという人が約半数いるのです。とんでもないことですよね。


アレルギー単独では14位ですが、アレルギーによる睡眠不足、眼精疲労、疲労感、頭痛、不眠がありえるわけで、この上位14項目は互いに影響し合います。


当院は睡眠時無呼吸症候群治療としてCPAP療法を処方しています。昼はもちろん生産性を下げないことが第一の目的ですが、夜は花粉症症状によってCPAPのアドヒアランスが下がったり、睡眠をじゃましたりしないように、昼同様、徹底して症状を取るように花粉症処方を行います。


副作用の眠気を利用する戦略も

花粉症の薬の第一選択薬といえば、抗ヒスタミン薬(H1ブロッカー)です。第1世代の抗ヒスタミン薬は諸症状に対する効果が強いけれど、眠気や口渇などの副作用が強いのが特徴で、副作用を解消するべく開発された第2世代は効き目が弱いというのがわかりやすい違いですが、1日1回の内服で眠気もインペアード・パフォーマンスも少ないのに効き目が強いビラノア®(ビラスチン)のようなよい薬も出てきています。


さて、仕事中に副作用の眠気が出たら生産性が低下しますが、どうせ眠る夜になら眠気が出ても問題ありません。第一世代の抗ヒスタミン薬は眠気が強く症状を止める効果が強いので、花粉症の生産性低下の主たる症状である睡眠不足にはもってこいです。実際に市販薬のドリエル®に含まれる眠気を催す成分は第一世代のジフェンヒドラミンです。コラム「ボケたくないなら 眠りなさい ③ 睡眠薬はボケ薬」などで批判的に取り上げてきたベンゾ・非ベンゾ系の睡眠薬と異なり、抗ヒスタミン薬には依存性も耐性もありません。


当院の花粉症+睡眠時無呼吸症候群患者、特に睡眠閾値の低いタイプや不眠を合併しているタイプには、積極的に第一世代の抗ヒスタミン薬を使っています。口渇や眠気という副作用は、仕事中には生産性を低下させますが、睡眠の邪魔はしません。


抗ヒスタミン薬を軸に、抗ロイコトリエン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、血管収縮薬、漢方Th2サイトカイン阻害薬、ステロイド、抗IgE抗体薬などなど薬の種類もたくさんあるし、症状に応じて点鼻、点眼、皮膚の塗り薬に筋注など、投与方法もたくさんあります。 もちろん減感作療法もシーズンオフの対策の一つです。心陽クリニックでは、減感作療法処方が可能です。 コラム「一度で39種類のアレルギーを検査」で紹介したような検査でアレルゲンを特定して、しっかり避ける工夫もお勧めです。


なんにせよ、とにかく通常診療時間内に、オンライン診療も利用して、医療機関にかかるのがお勧めです。

従業員が企業に望む花粉症対策(左)の第1位も花粉症治療費の補助、やればよかったと後悔する花粉症対策の第1位も病院での治療、第2位は漢方等による治療ですから、これも医療機関受診が必要です。左の企業に望む支援の中には「企業病院の紹介」もあります。このクリニックなら、オンライン診療できますよ、と教えてあげるだけでも、喜ばれるのです。


心陽クリニックは、株式会社心陽と協力して、企業へのVIC(バーチャル企業内診療所)サービスを展開しております。就業時間内に会社のリソースを使ってちゃちゃっとオンライン受診、処方薬はデスクに届く、そんな生産性の高い花粉症対策にご興味のある企業は、ぜひ、ご連絡ください。



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