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腋窩体温の意義

手術中の体温管理は 重要な課題です。

そのため 術中は体温を前額、口腔・鼻腔、食道、直腸、膀胱、肺動脈カテーテルなどで持続的に測定します。

特に体温をシャープにコントロールする必要のある場合は、複数箇所でモニタリングします。

病棟を出る際にもたいてい腋窩(「えきか」と読みます。「わきのした」のことです)で術前の体温を測定してくるのですが、正確に深部温を測定してみると、かなりギャップがあります。 「34.7度です」なんて平気な顔で申し送られるとぎょっとしてしまうのですが、すぐに体に触れてみるとあきらかに嘘だろ~~とわかります。

脇の下に体温計を挟むのはけっこう難しい動作ですし、小児や高齢者はもちろん誰にとっても認知の問題が発生しますよね。

本来、測定姿勢や理解によって差が出てしまうような検査はあまり望ましいものではありませんが、ひとつよい点としては非侵襲的な点ですね。ただ、予測値として利用するだけなら、実際は触診でもいいのかもしれません。

最近は非接触式の図のような体温計が使われることが多いですね。

インフルエンザワクチン接種前の検温では腋窩体温計を今年も用いましたが、クリニックの備品は3分計でみんな飽きてしまい、なぜか「35.7度」の測定値が最頻値という明らかに疑わしい結果になりました。 あまりにクレーム(「長い!」)が多かったので、20秒で予測値が出る体温計に変えたところ、なんとなくよさそうな値が出るようになりました。 医療上の測定結果で、なんとなくよさそうな結果を信じてしまい、そうでない結果を機器の不良のせいにしてしまうのは非常に危険なのですが、今回の研究で「やっぱりな~」と思わず納得してしまいました。

11月に出された論文です。

末梢体温計による発熱の検出に関するプールした感度および特異度はそれぞれ64%および96%であった。 すなわち、末梢体温計が発熱を検出した場合、発熱が存在する確率は高かったが、末梢体温計は高頻度で発熱を検出し損なった。腋窩体温計の感度がもっとも低かった(42%)。

感度というのはざっくりいうと、本当に発熱している人のうち、末梢体温測定によってちゃんと発熱していると評価される人の割合で、特異度というのは実際に発熱していない人のうち、正しく発熱していないと評価される人の割合です。

すべての検査はその感度と特異度で評価されます。

たとえば健診のようなスクリーニングでは、 病気がある人を漏れなく抽出できたほうがいいので、感度を上げますが、その分、特異度が下がってしまいます。(この辺はそのうちゆっくり書きましょう!)

要は、熱が出ていないのに出ていると評価される人はあまりいないけど、熱があるのにないと評価されてしまう人はけっこういるってことですね、まあ、実感と一緒ですね。それが科学的に証明されたわけです。

もし、熱っぽいなあと思ったけど腋窩体温が平熱な場合は、その測定値を疑う必要があるかもしれませんね。


Accuracy of Peripheral Thermometers for Estimating Temperature: A Systematic Review and Meta-analysis

Daniel J. Niven, MD, MSc; Jonathan E. Gaudet, MD, MSc; Kevin B. Laupland, MD, MSc; Kelly J. Mrklas, MSc; Derek J. Roberts, MD, PhD; and Henry Thomas Stelfox, MD, PhD

Ann Intern Med. 2015;163(10):768-777. doi:10.7326/M15-1150


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