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第⑨位 米国女性の83.8%がアンダーヘアを処理している

すごいタイトルで恐縮ですが、先月29日にJAMA Dermatology に発表された正真正銘の医学研究です。

リンクから全文が参照できます。

調査と解析にはGfK Group(旧Knowledge Networks)が協力。

米郵政公社が用いる郵便集配リストの住所情報に基づき、サンプルをランダムに抽出し、施設に入所していない米国在住の18~65歳の女性3,372人から同意書を取得し、2013年1月にインターネットによる質問票調査を実施、2015年11月~12月に、回答があった3,316人のデータを解析したものです。

パイパン調査に3,372人のデータを集めるってなんだかすごいことですよね。 最近ではパイパンと言わずにハイジニーナ脱毛と言うそうです。

すごいどうでもいいネタですが、陰毛を pubic hair と英語でいうと知ったとき、public hair かと思って驚愕しました。


日本にもあったVラインの脱毛調査

都内の脱毛サロンが1都3県在住の20代、30代の男女計1,000名にパートナーの脱毛に関するアンケート調査を実施していました。

アンケート調査概要は1都3県に居住する男性500人、女性500人の計1,000人で期間は2012年3月12日~14日です。


この調査では何もしていない自然のままの女性が48%とほぼ半分ですね。

2012年にカミソリのシックジャパンが日本女性1000人に行った調査の結果はこちら。

・何らかの形でアンダーヘアの手入れをしている女性は、全体の約60パーセント。 ・ハイジニーナ脱毛(パイパン)にしている割合は、全体の約10パーセント。 ・18歳までにお手入れを始める割合は、全体の36パーセント。

皆さん、けっこう好感を持っているようですが、3分の1は嫌悪感を持つようなので、リスクも大きいですね。

相手の印象については、男性の意見を聞いてみなくてはいけないので、その下には男性からみた女性パートナーへの印象を円グラフにしたものをそえました。

手術をするときは全裸になりますので、下着をとるとつるっとしていることがありますが、日本ではまだ、驚きを持って受け入れられることが多いように思います。

どちらかと言えば、あるのが当然、なのではないでしょうか。

実際は手術の時、なくて困ることはないので、手術室では好意的に受け入れられてもよいのですが、やはり、驚きが勝る印象があります。


特にご高齢の方は、髪の毛が黒々ふさふさでもアンダーヘアーはまばらになることが多く、ときどき患者さんに、

「温泉に行くと気恥ずかしいんだけど、増やす方法はないかしら?」なんてご質問をいただくこともあるくらいです。


別の調査では日本女性の7割がなんらか整えていて、5.7%が完全につるつるにしているという結果があるようです。


さて、各国の陰毛処理率とその傾向という今回のような研究は、今後、いかように公衆衛生や医学の発展に関わってくるのでしょうか。

今回話題にしている研究でも13もの文献のサイテーションがついています。

Google Scholar で2012年以降、「pubic hair grooming」で検索してみたら、2000件以上のヒットがありました。

救急部で調査したりしています。

STDとの関連などがわかればおもしろいのかもしれませんが・・・・・・


米国のハイジニーナ脱毛率は6割以上

米国では女性の6割超が陰毛全体を除毛しているようです。

白人女性は他の人種・民族の女性に比べて処理の実施率が高く、また若年、高学歴の女性ほど実施率が高いようです。

どういう情報が元になっているのかはわかりませんが、以前、

「女医は全員パイパンなんでしょう?」と尋ねられたことがあります。

高学歴だからでしょうか?

衛生上の話をすれば、確かにすべての毛はないほうが清潔かもしれませんが、不潔になりやすい部分だからこそ、毛が外界からのストレスを阻んでくれているものでもあります。

3,316人を調査した結果、2,778人(83.8%)が陰毛処理を行い、538人(16.2%)が全く処理したことがないと回答。

処理部位は恥骨上部(73.9%)および腟周囲(75.1%)が多く、全体を除毛すると回答したのは62.1%だった。

これが、パイパン率62.7%という結果で、日本女性の10倍は全処理をしているということですね。


生まれてからこの瞬間まで、こんなに陰毛のことを考えたことはありませんが、お国が変わればいろいろなモノが変わるのだなあ、と思います。

有名な女医のおおたわ先生は、あらゆる脱毛は女子力を下げると主張していますよね。

処理の動機については、衛生上の理由(59.0%)、日常的な手入れの一環(45.5%)、性器の魅力が増すと思うから(31.5%)、パートナーが好むから(21.1%)という回答が多かったようです。


Makes my vagina looks nicer っていう感覚はあんまり日本人にはなじまないような気がしますが、どうなのでしょうか。

正直、私はちょっとびっくりしました。

どんな場面に備えて処理するかという質問では、性行為(55.6%)という回答が最も多く、休暇(45.7%)、医療機関の受診(40.0%)と続いたようです。

医療機関の受診の際は、外性器の見た目の魅力というより衛生面での配慮でしょうか。

だとすれば、非常にありがたいことですが、診察のしやすさという点では毛がないほうがよいものの、清潔さ、あるいは感染しやすさという点では必ずしもお勧めできません。

特にかみそりなどによる剃毛は小さな傷をつけてしまい、むしろ望ましくないのです。

もし医療従事者へのお気遣いだけでなさるなら、しないほうがよいかもしれません。

医療機関を受診する準備は、けっこう皆さん、誤解があって、

「あー、やらないできてくれたらよかったのに・・」っていう機会も多いんです。

たとえば、空腹でしかできない処置は多く、空腹ではできない処置はほとんどないので、病院行く前に栄養をつけてくるのはNGなんだけど、無理して食べさせる家族がけっこう多い。 病院では栄養補給もできますので、空腹時はそのままいらしてくださいね。


年齢、学歴、人種に影響はあるが、性癖とは関連がない


多変量ロジスティック回帰分析では、多様な因子が陰毛処理に関連することが判明しました。

若年女性(18~24歳)に比べ、45~55歳〔オッズ比(OR)0.05、95%CI 0.01~0.49、P=0.01〕および55歳を超える女性(同0.04、0.00~0.34、P=0.003)は処理の実施率が有意に低く、学士以上の学位を有する高学歴の女性(同2.39、1.17~4.88、P=0.02)は処理の実施率が高かったそうです。

人種との関連も認められ、白人女性に比べて他の人種の女性は実施率が低かったのです。

所得、結婚歴、居住地域との関連は認められませんでした。


また、パートナーの影響は多変量調整後も認められました。

パートナーが陰毛処理を行わない女性は自身の実施率も低く(同0.43、0.24~0.75、P>0.003)、パートナーが処理を好まない女性も実施率が低かった(同0.04、0.02~0.10、P<0.001)。

しかし、他の研究とは対照的に、肛門性交やオーラルセックスといった性行為のタイプや頻度との関連は、多変量調整後には認めらませんでした。


日本では脱毛を希望する患者さんに、玄人さんだと思われるリスクを脱毛を実施する医師が伝えることが一般的だそうです。(実施クリニックへのアンケート調査より)


実際に職業と陰毛との関連を示すデータはないようですし、研究する動機もなさそうですが、やっぱり戻してほしいと訴える患者さんの多くはそういう誤解を招くことにうんざりして、という理由が多いからだそうです。脱毛の場合は放置しても以前のようにふさふさに戻すことは難しいので、施術の前にご説明しておくようです。


特定のタイプの性行為が陰毛処理に関連するという認識が普及しているようだが、米国の女性を代表するサンプルを用いて多変量回帰分析により交絡因子を調整した今回の調査では異なる結果になったと、著者は述べています。

相違の原因は調査方法にあるかもしれませんが、似たような偏見が米国でもあるのだなあとも知りました。

今回の調査で、女性が陰毛を処理する動機は多様であり、文化的規範や美的感覚の相違を反映している可能性があることが示されました。

医療従事者は陰毛処理に関連するリスク(特に剃毛による外傷のリスク)について助言を求められることが多く、女性による陰毛処理の実態を知っておくことは重要であるとはいえ、うーん、どうなんでしょうねえ。


20年前は手術の前に術野を剃毛することが一般的だったように記憶していますが、2016年のWHOのSSI予防ガイドラインによると無剃毛が推奨されています。(2018年6月追記)


剃毛が一般的だった時代の動機は衛生面ではなく、主に術操作のしやすさでした。

医療従事者の勝手で不要な剃毛をすることで、患者さんのアイデンティティが傷つく場合もありますので、医療の領域でも安全性(感染予防)の点からも、心理社会的な悪影響の点からも、不要な剃毛は避けるべきと考えるのが現在の潮流です。


まあ、どなたもケアするときは一度、医師にご相談ください。

ちなみにレーザー脱毛は本来、医師しかできませんから、医師のいない機関で、センシティブな部分にレーザーをあててもらうようなリスクはとらないでくださいね。

剃刀も理容師しか当てられません。

エステティシャンにはどちらの権利もないので、ご注意ください。


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