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小児の2回接種と筋注について[インフルエンザワクチン]

13歳未満は2回接種?!


小児のインフルエンザワクチン接種回数については、毎年ご説明しているとおりです。


生まれて初めて接種したシーズンに2回接種し、その後、毎年1回接種しているなら、科学的には「2回接種の大きな害はないが、メリットもない」というのが国際的なコンセンサスです。

  

初回2回は「免疫プライミング(初期免疫応答の強化)」のためですが、毎年の接種で抗原記憶が維持されるため、2回目の上乗せ効果はほとんどありません。

したがって、抗体価の上昇・持続は1回でも十分というのが世界の共通理解です。


小さなことですが、接種部位反応(発赤・腫脹など)は2回分でお金も手間も時間もかかります。

注射好きな子供は少ないので、連れてくるのはたいへんですよね。

極めてまれに、2回接種によるオーバーラップの免疫刺激による倦怠感・発熱の増強が報告されます。


そのため、当院では、小児の2回接種を推奨していません。 グローバルコンセンサスを説明したうえで、本人及び保護者の希望がある場合に2回接種をしております。


日本の制度の位置づけ


日本では厚労省が定める「インフルエンザ予防接種実施要領」により、13歳未満は2回接種(1~4週あけて) が標準とされています。

これは「ワクチンの抗体獲得効率を安定させる」ことを目的に、制度上の“年齢区分”として運用されています。

つまり、接種歴や免疫記憶を考慮せず、年齢で一律に2回、というルールです。


背景には次のような事情があります:

  • 日本では季節性インフルエンザワクチンの抗原量が(米国などより)やや少ない。

  • 小児科領域で「ブースト効果を安定化させたい」との配慮が強い。

  • 医療体制的に、年齢で分けた方が現場が運用しやすい。

海外の一般的な考え方


一方で、多くの国では「初めてのシーズンだけ2回」 という考え方です。

具体的には:

  • 米国 CDC:6か月~8歳の子どもで「過去に2回以上の接種歴がない」場合、そのシーズンは2回接種。それ以外は毎年1回。

  • 英国 NHS:初回のみ2回(注射または経鼻型)。その後は1回。

  • オーストラリア:同様に初回2回、それ以降は1回。

観点

日本

多くの国(米・英・豪など)

判定基準

年齢(13歳未満は全員2回)

接種歴(初回だけ2回)

対象年齢

6か月〜12歳

6か月〜8歳程度

目的

制度上の一律化・抗体安定

免疫プライミング目的

毎年の2回目接種の科学的根拠

ほぼなし

不要

追加2回目のデメリット

実質的にはほぼなし

同上

🇯🇵 日本の現状は「皮下注」推奨


当院は筋注で接種しています。

科学的根拠と患者体験の両面から国際的には主流にあたり、合理的だからです。


日本のインフルエンザワクチン添付文書や厚労省の「インフルエンザ予防接種実施要領」では、「皮下接種」が標準的な方法として示されています。

これは制度的な経緯が大きく、科学的理由というよりも、日本のワクチン全体が「皮下注文化」で発展してきた名残です。


歴史的背景

  • 戦後の予防接種法制定以降、日本ではワクチンの多くが皮下注用に設計・承認された。

  • 皮下注で重篤な筋肉障害(特に破傷風ワクチン時代の懸念)を避ける安全志向が強かった。

  • 一方で、ワクチン製剤自体は本来「筋注用設計」に近い抗原特性を持つ。


そのため「法的には皮下注」「実質的には筋注でも安全・有効」という二重構造が生じています。


🌍 グローバルスタンダード:筋注が標準


WHO、CDC、NHSいずれもインフルエンザワクチンの投与経路は“intramuscular(IM)”が原則。


  • 推奨部位は三角筋(deltoid muscle)

  • 幼児では大腿前外側部(anterolateral thigh)

  • 皮下注は明確な禁忌ではないが、「免疫反応がやや低下する可能性がある」ため一般には採用されません。


💉 筋注の利点(科学的エビデンス)


1. 抗体価(免疫原性)


  • 多くの研究で、筋注の方が抗体価上昇が有意に高いことが確認されています。

  • 特にインフルエンザA(H3N2)株などで、皮下注との差が明確に出やすい。

  • 理由は、筋肉組織の血流が豊富で、抗原提示細胞(APC)が多いことによる。


2. 局所反応・疼痛


  • 皮下注では発赤・硬結・腫脹が多く、疼痛も持続しやすい。

  • 筋注は針を深く刺す瞬間の刺激は強いが、局所炎症は少なく回復が早い。

  • 患者の満足度調査でも筋注の方が高いという報告が多数あります。


3. 安全性


  • 適切な部位(上腕三角筋中央外側)に打てば、神経損傷や血管穿刺のリスクはほぼゼロ。

  • WHOガイドラインでも「IM injection is safe and preferred route」と明記されています。



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