健康経営施策と名医の誤診

真の健康経営を実践するなら、【科学的エビデンス】か【法令等の社会的奨励】がある施策を選択しましょう。


健康経営するなら、施策の選択が一番重要です。

それは、医療において、診断が一番重要なのと一緒です。

健康経営施策で成功したいなら、【科学的エビデンス】か【法令等の社会的奨励】がある上に、『シンプル』な施策を選択しましょう。


医療において、診断が重要な理由は、診断さえ合っていれば、『誰がやっても治療効果が出る』からです。

誰でも名医に診てもらいたいでしょうが、特に日本の保険医療制度においては、治療に腕の善し悪しなんて出ません。

いくら通院しても成果が出ないなら、診断が間違っているのでしょう。


治療は名医じゃなくていいですが、診断は名医のほうがいいかというと、残念ながら、ちがいます。診断も、だいたい誰がやっても同じです。


さらに、名医は誤診します。

正確には、誤診に気付けるのが、名医です。しっかりと真の診断に辿り着こうとして、自分の診断を疑わないかぎりは、誤診には気付けません。

「誤診したことない」という医師は、あまり賢くないでしょう。

とはいえ、診断さえ正しければ、あとは誰が出しても薬の効果は同じ、相性で選ぶのが何よりなので、医師が賢くなくても大丈夫、安心してください。

ほとんどの慢性疾患診療の場合、医者に知識も技能も不要です。患者の治療継続力が、一番大きな成功要因です。行動しない迷患者には、名医でも歯が立ちません。


健康経営施策の選択で誤診したくないなら、『シンプル』な施策を選びましょう。

たとえば、高血圧症の9割以上は「本態性高血圧」ですから、名医でなくても診断は難しくありません。これが『シンプル』な診断です。

もちろん、初診で「偽性アルドステロン症」を見抜いてもらえば、患者は楽です。正しい診断に時間がかかると、本人は苦しく、病気は進行し、医療費がかかります。


名医は、患者の治療継続力が高いのに、治療効果が芳しくないときは、自身の診断を疑います。

名医は、多様な患者の多様な症状や訴えから、非典型性を知覚し、稀な疾患を見抜ける名探偵のような存在です。

コナンやホームズのまわりでは不自然なほど特殊な事件が起こりますが、同じように名医は希少な疾患をよく診断します。名探偵の周りでだけ難解な事件が起こったり、名医の前でだけ希少疾患が発症したりするのではなく、名探偵や名医の視力、観察力、洞察力の差です。


だからこそ名医は誤診率が高いです。「本態性高血圧」しか診断しない医者の誤診率は1割未満どころかゼロなので、「俺、誤診したことない」というのは嘘ではありません。

主治医の処方で結果が出ないとき、信頼関係が弱いほど、別の医者に診てもらいます。

『後医は名医』という表現もあって、「前の先生は数ヶ月かかってもわからなかったのに、次の先生はすぐ見つけて治してくれた!」みたいなことはよくあるのですが、それもそのはず、後医は、前の先生の試行錯誤によるヒントをもらえるので、ごっつぁんゴールできるだけです。「俺、誤診しないから」的医師が前医だと、患者の後医選択はより慎重になり、自称・誤診しない医師は後医になるチャンスが少ないので、ますます誤診しません。

名医の場合は、信頼関係を築いてしまうので、患者が離れないし、多くの患者、そしてなにより同業者から信頼されているので、診断の難しい患者ばかり診なければなりません。そこで誤診率はあがります。しかも、正しい診断にたどり着くので、前回の診断が誤診だったと自ら証明してしまいます。紹介患者の場合にも前医の診断を鵜呑みにしないので、まず診断し直します。その場合にも前医の診断を覆す際、自分の誤診とカウントするでしょう。

「俺、誤診したことないぜ」医師は、自分の垂れ流した誤診に気付いていないだけなのです。


健康経営施策は集団向けの公衆衛生施策ですから、名医を目指して難しくて複雑なゴールを狙う必要はありません。9割以上にとって正解なら万々歳です。誤診しない健康経営施策担当者は名担当者です。

どんな組織にも、よくもわるくも多様に飛び抜けた人はいますので、特殊な声を上げる少数の従業員に対しては、個別に対応していきましょう。そういう従業員の相手には名人がいいので、私含め、その道のプロに丸投げしちゃうのがいいでしょうね。それが、専門職の賢い使い道です。


さて、そういうわけで健康経営施策は【科学的エビデンス】か【社会的奨励】があって、『シンプル』なものを選んでください。

これからなにか始めようという企業にイチオシなのが、『睡眠時間の確保』です。

睡眠が大切なのは言わずとしれたこと、健康や生産性との関係を証明する科学的エビデンスはごまんとありますし、社会的奨励にも事欠きません。


長時間労働と心身の健康には疫学的な関係がありますが、心身の疾患を引き起こす真の原因は、長時間労働ではなく睡眠不足であると、識者の考察は一致しています。

たとえば、労働者と非労働者では労働者、やりがいのある人とない人ではある人、貧困とそうでない人ではそうでない人のほうが健康であるという科学的なエビデンスがあります。

つまり、労働による金銭的な報酬だけでなく、役割があるとか、社会に貢献しているとかいう心理社会的な報酬は、健康を大きく後押ししています。

別の表現を用いれば、お金と健康、やりがいと健康、睡眠と健康はトレードオフの関係ですが、労働(時間)と健康にその関係はありません。


社会的責任のない仕事はないので、長時間労働の是正に成功しても、業務上、特に心理的な負担の大きさは継続します。

また、労働時間の社会的制約が大きく、仕事は複雑化し、複雑化するゆえにトラブルが増え、単位時間あたりに処理するべき仕事量はどんどん増えていきます。

一時的なストレスは生物のパフォーマンスを高めることが科学的に証明されています。

研究によると、生産性の高い労働者ほど、業務開始からストレスホルモンがぐんぐんと増えますが、メンタルヘルス不調の場合、ストレスホルモンは増えません。

生産性の高い労働者は、業務終了後、すぐにストレスホルモンの血中濃度が下がり、さらに睡眠を取った翌朝には完全な副交感神経優位の状態になります。

そこから出勤して、ぐんぐんストレスを高めて、バリバリと仕事をこなします。

一方、メンタルヘルス不調の場合、業務が終了しても、翌朝になっても、ストレス値が減りません。

つまり、ストレスはその日のうちに解消すれば生産性をあげる肥やしになります。

仕事のストレスが疲労として蓄積すると、翌日以降に悪さをして、健康や生産性の邪魔をしますが、充分な休息、特に睡眠でメリハリをつければ、業務中にストレスが多いことは悪ではありません。


そこで、メンタルヘルスにもウェルビーイングにも貢献度の高い「睡眠」、特に、誰にでも客観的に可視化できる「睡眠時間」をテーマにすることを提案します。

過重労働面談では睡眠時間を聴取しますが、労働時間より睡眠時間のほうが疲労の蓄積度に明らかに影響していますし、それが生産性・パフォーマンスとなると、より強い相関があるでしょう。

睡眠時間の確保は、誰でも無料で簡単に実践することができますから、非常に公正で平等な学びの提供になるでしょう。

私としては、最初は時間だけに焦点を当てることを推奨しますが、いわゆる一般的な睡眠認知行動療法を加えてもいいでしょう。

認知行動療法の中で、睡眠認知行動療法は、eラーニングのようなオンラインでも集団でも、対面や個人と同じかそれ以上の効果があることが証明されています。





閲覧数:9回0件のコメント

最新記事

すべて表示