インフルエンザ関連ブログ(2016~2017)

更新日:2020年12月13日

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2016年10月16日

「インフルエンザワクチンって効かないこともあるんですよね?」

それではそもそも「インフルエンザワクチンが効く」ってなんなの? というと、一応、定義があるんです。

インフルエンザワクチンの有効性の国際的な評価基準


参考:EMEA 評価基準(HI 抗体価)

18-60 歳 以下の3 つのうち少なくとも一つを満たすこと

 1) 抗体陽転率

  「HI 抗体価が接種前に<10 倍かつ接種後40 倍以上」

   または

  「HI 抗体価の変化率が4 倍以上」の割合 >40%

 2) 抗体変化率

  幾何平均抗体価(GMT)の接種前後の増加倍率 >2.5 倍 、

 3)抗体保有率

  HI 抗体価40 倍以上の割合 >70%


60 歳以上 以下の3 つのうち少なくとも一つを満たすこと

 1)抗体陽転率

  「HI 抗体価が接種前に<10 倍かつ接種後40 倍以上」

   または

  「HI 抗体価の変化率が4 倍以上」の割合 >30%

 2)抗体変化率

  幾何平均抗体価(GMT)の接種前後の増加倍率 >2 倍

 3)抗体保有率

  HI 抗体価40 倍以上の割合 >60%

「インフルエンザワクチンはどうして効くの?」 という質問の答えは、このマンガが明快だと思います!

「二度目はいつ頃受ければよいですか?」

接種の前に、「大人は一度」とご説明しているのですが、毎度、ご質問くださる方がいらっしゃるので、わかりやすいリサーチを共有します。

ちょっと古い(2009)ので、昨年からの4価ワクチンではなく、3価ワクチンです。

(治験概要)

200人の成人で通常量or倍量接種と1回or2回接種の4群で抗体価の様子を比べてみました。


(結果)

●本件の被験者の性別・年齢は図の通りです。

●接種前の H1N1 の HI 抗体保有者(≧40 倍)は、198 人中 11 人(5.6%)。

●抗体保有率(接種後≧40 倍):4群でたいして変わりはなかった

 15μg1 回接種後では、HI 抗体価 40 倍以上の人が 98 人中 77人(78.6%)

 30μg1回接種後では、HI抗体価 40倍以上の人が 100人中 88人(88.0%)

 15μg2 回接種後では、HI 抗体価 40 倍以上の人が 98 人中 76 人(77.6%)

 30μg2 回接種後では、HI 抗体価 40 倍以上の人が 100 人中 88 人(88.0%)


●抗体陽転率:抗体価4倍以上上昇し かつ HI 抗体価が 40 倍以上の方の割合

15μg1回接種後では 98 人中 72 人(73.5%)

30μg1 回接種後では 100 人中 87 人(87.0%)

15μg2 回接種後では 98 人中 70 人(71.4%)

30μg2 回接種後では 100 人中 88 人(88.0%)

●接種前の抗体価を基準とした抗体価変化率

15μg1 回接種後は 9.28 倍

30μg1 回接種群後 20.97 倍

15μg2 回接種後は 8.65 倍

30μg2 回接種群後 17.75 倍


●抗体有意上昇率:

「HI 抗体価の変化率が 4 倍以上の割合」

15μg1 回接種後は 80.6%(98 人中 79 人)

30μg1 回接種群 92.0%(100 人中 92 人)

15μg2 回接種後は 80.6%(98 人中 79 人)

30μg2 回接種群 96.0%(100 人中 96 人)

というわけで、だからなんなの? という問の答えは、普通の量を1回打つのと、量を増やしたり、回数を増やしたり、どっちも増やしたりするのと、思ったほど変わりはない、というか、普通の量を1回打っても充分、効くよね、ということなのでした。

もちろん予想通り、回数や量を増やすことによって、多少、効き目が増えるようですが、数値としてまったく差が出てない評価もありますね。

ただ、冒頭の問への答えに戻りますと、どの群にも100%という数字がない以上、「効かないことがないわけではない」と言わないわけにはいかないようです。f


2017年10月9日 有給休暇で会社が儲かるエビデンス

Potential Economic Benefits of Paid Sick Leave in Reducing Absenteeism Related to the Spread of Influenza-Like Illness

インフルエンザ有給休暇経済効果という私の大好物ネタばかりを扱ったすばらしい研究が発表されました。

序文と考察を読むだけでもすごく楽しいので、健康経営に興味がある方に猛烈にお勧めです!! (しかも全文閲覧可能)

職場でインフルエンザが流行してしまうことによるアブセンティーイズムを有給休暇ありとなしの場合で比較したものです。

アブセンティーイズムは会社に従業員がいない(休んでる・勤怠表上欠勤)ってことで生じる企業のコストです。 詳しく解説させていただけるなら、いつでも御社にお邪魔します。

有給休暇こそがアブセンティーイズムの元、って浅く考えてしまう経営者が多いのかもしれませんが、この研究によると、有給休暇があることでコストが削減できるという結果が出ました。


どれくらいコストが下がるかというとアメリカ全体で  年間6.3~18.8億ドル です。

びっくりしませんか? とゆーか全然ピンとこないと思いますので、2016年末の全米就業者数の1億5,000万人で割ってみると、42~125ドルです。つまり、一人当たり4,870~14,500円くらいですね。この就業者数は勤労所得または自営所得を有する者の数なので、調査対象より大きな数ですから、この額以上なんだなあって思ってください。非農業部門雇用者対象数が4,700万人程度ですからね。

ちなみに調査の背景には有給休暇制度のお国柄の違いがあります。

日本では労働基準法第39条にしっかりと有給休暇の支給義務が定められています。 日本の有給取得率の低さを論じる際に、必ずと言っていいほど、 「休みを取るのが心苦しい(罪悪感)」 という従業員のメンタリティーが指摘されるんですが、むしろ会社のコンプライアンスを高める行為なので、長時間労働の減少と同様に会社のためになるんです。会社に貢献したいと考えるマジメな従業員こそ、積極的に有休を取得するべきなんですよ。


労働時間は各社員レベルでなかなか調整するのは難しいかもしれないけれど、代休や振休で調節せず、有給休暇をどんどん取って、取得率を上げることも、会社への貢献になるんです。

労働時間の削減で貢献できなくて悪いな~、本当はもっと会社に貢献したいのに~~~と考えるマジメなあなたは、せめて有給を取得してあげましょう。

日本の有給取得率はとても低いのですが、付与日数もとても少ないんです。1988年の労働基準法改正により、最低6日から最低10日に引き上げられても、世界最低水準です。100%取得しても世界的には充分働いています。

米国では有給休暇に関する法的拘束はありません。休暇に関する法律だけを見ると、日本は世界でも非常にすばらしいということは、生理休暇についてのコラムでも書きました。

休暇先進国であるフランスの有給休暇に関する法を参照すると、1930年代には全ての労働者が毎年連続2週間の有給休暇を付与される、通称「バカンス法(正式名称:マティニョン法)」と呼ばれる法律が定められていました。それ以後、有給休暇の付与日数は時代を追うごとに増え、1982年に現在の水準である年5週間の有給休暇を、さらに連続12労働日を超える長期有給休暇を1年に1度以上与えることが定められ、企業の側に有給を計画的に取らせる義務もあるのです。 日本と北米を除いたすべてのOECD(経済協力開発機構)加盟国では、最低でも20日間の有給休暇付与が定められています。 ポルトガルやオーストリアにいたっては35日間です。 国際労働機関(ILO)によって1970年に採択されたILO第132号条約で、労働者の有給休暇は、1年勤務につき3労働週(5日制なら15日、6日制なら18日)以上とされていますが、日本はこれを批准していません。ちなみに、世界の働き方を提言するILOの189条約のうち、日本が批准しているのはたった26%足らずの49条約です。 労働時間に関するILO条約を一つも批准せず、WHOからは女性が奴隷のように扱われていると警告され、「KAROSHI」が外国でも通じる、そんな国が日本なんです。 ドイツでは6週間までの病欠のみを対象にした有給休暇がが認められています。 デンマークでは病欠期間中、最大120日間まで100%の給料もしくは手当の支払いが定められています。 オーストラリアでは従業員本人だけでなくその家族の看病や緊急事態に対する有給病気休暇まで用意されています。 有給の病気休暇を取り切ってしまった後は無給病気休暇としてさらに2日間会社を休むことも可能です。 この辺、各国の労働の違い、医療の違いはいろいろな資料がありますが、私は以前も触れた映画、「シッコ」をお勧めします。 アメリカでは法規制がありませんが、年間で10日間の有給休暇(paid holidays)が一般的、そのほかの休暇として、有給無給は企業ごとに異なりますが、概ね2週間のバケーション、2日間の特別休暇(忌引きとか、結婚とか、宗教上の休日とか、そういう個人的な休暇)、8日間の傷病休暇というパターンが多いですね。国の法律はないのですが、州ごとの条例では有給の定めがあります。(冒頭引用研究の付表1参照) 研究で言及されている有給は最後の有給傷病休暇についての話題です。 アメリカには法規制がないといっても、半年働いて初めて10日という日本の基準、そしてその最低ラインを選択している日本企業が多いという現状を鑑みると、やっぱり日本のほうが少ないんじゃないかな~~~って思います。 休暇に対する感覚も違いますから、日本ではPSLとPTOと分けて考えるような習慣はないですよね。 また、誤解のなきように最後に強調しておきますが、この研究ではインフルエンザ及びインフルエンザ様疾患のアブセンティーイズムに限定してその価格を計算したものです。 有給休暇によって削減されるアブセンティーイズムはほかにも多くの原因がありますし、プレゼンティーイズムに至っては言うまでもなくアブセンティーイズムの10倍以上の可能性もあります。 また、研究中に引用されているとおり、そもそも有給傷病休暇を設けている企業はそうでない企業に比べて42%も多く職場での集団インフルエンザワクチン接種をしています。健康経営に関わるまともな制度を設けている企業が儲けているってなことが言えそうです。 お後がよろしいようで。


2016年9月25日 インフルエンザワクチン接種後の副反応と妊婦の接種


インフルエンザワクチン接種のシーズンがはじまります


本年のインフルエンザ情報はこちらのコラムを参照してください。

コラムにもありますように、本年度はチメロサールフリーの製剤はありません。

チメロサールは有機水銀の一種ときくと、特に妊娠中の女性はワクチンが恐ろしいものだと思ってしまうかもしれません。

ワクチンに含まれる量で人体や胎児、発生に影響を与えることはないと考えられていますが、気になってワクチンを避けてしまう人がいるので、昨年まではチメロサールフリー製剤を使用しておりました。

これまで、ワクチンの経済効果社会への効果に言及してきましたが、今回は妊婦のインフルエンザワクチン接種についての情報提供です。

これから赤ちゃんを授かる方へ

妊娠中の女性こそ、インフルエンザワクチン接種をするべきだと私は考えますが、世の中にはいろいろなことを言う人がいるので、混乱してしまいますよね。

誰でも生まれてくる赤ちゃんにベストな選択をしてあげたいと思うのは当然だし、お母さんになるあなたにとって一番安心で安全でありたいと周囲の人は願っています。

オーストラリアでは日本の妊娠12週になってはじめて妊娠という診断が下されますが、日本の妊娠は尿中にヒト絨毛性ゴナドトロピンが検出されればポジティブです。だから、ちょうど赤ちゃんがほしくてがんばっている最中の女性は、ずいぶん早く診断されてしまいます。そういうタイプの女性ほど、ワクチンを打つべきか、打たざるべきか、迷っちゃうと思います。

だから、まだ妊娠していないなら迷わず打つことをオススメします。ワクチン接種で妊娠しにくくなることは証明されていないし、理論的にもありえないので、準備しておきましょう。

イギリス、オーストラリア、ニュージーランドなどでは妊娠中、優先的に無料接種

イギリスでは妊娠中の死亡原因の11件に1件がインフルエンザワクチン感染によるものでした。(9.1%)

また、インフルエンザに感染した際に集中治療室に入る率が、妊婦では全体の10倍以上になるというデータもあります。

妊娠中は免疫の状態が変化するため、インフルエンザに限らず、感染症が重症化しやすいリスクがあります。

妊娠中のインフルエンザ感染と出生してくる子どもの双極性障害の関係を示唆する研究もあります。

ワクチンを接種することで赤ちゃんに影響があるとすれば、移行抗体の影響で赤ちゃんがインフルエンザにかかりにくくなることです。生後6ヶ月までの感染が41%減少したという北米のデータがあります。

1歳になるまで赤ちゃんにワクチンを打つことはできないので、お母さんが受けておいてあげるのがよさそうです。

インフルエンザワクチンの副反応

そう言われても気になるインフルエンザワクチン接種による有害事象について、国内の報告をみてみましょう。

最新の報告である、2014-2015年シーズンの推定接種者数はのべ51,378,967人で前年より600万人くらい増えていますが、副反応の報告頻度は変わりませんでした。

副反応の報告数は0.0005%(200,000人に1人の割合)、このうち、重篤なものが0.0002%、うち死亡報告数が0.00002%でした。

報告症例の年齢は0~9歳までと70歳以上に集中しており、10歳以上70歳未満で最も重篤な副反応の報告は、2シーズン合わせて1件でした。

死亡報告のいずれの症例においても、専門家の評価によると基礎疾患の悪化や他の要因による死亡の可能性が高いと考えられ、ワクチン接種と死亡との直接的な明確な因果関係が認められませんでした。

インフルエンザの感染者数と死亡者数(厚労省HPより)


例年のインフルエンザの感染者数は、国内で推定約1000万人いると言われています。

国内の2000年以降の死因別死亡者数では、年間でインフルエンザによる死亡数は214(2001年)~1818(2005年)人です。

また、直接的及び間接的にインフルエンザの流行によって生じた死亡を推計する超過死亡概念というものがあり、この推計によりインフルエンザによる年間死亡者数は、世界で約25~50万人、日本で約1万人と推計されています。

ワクチンを打たない理由


恐怖を煽るために引用したのではありませんが、インフルエンザワクチンを接種する理由、接種しない理由があり、接種する自由としない自由があります。

でも、特に打たない理由については、誤解があるのかもしれないな、と毎年、感じてしまいます。

特にメディアが扇情的にワクチンを推奨したり、忌避したりするので、多くの人は戸惑ってしまいますよね。

だから企業がデフォルトオプションを作ってください、というのが心陽の意見です。

アメリカの接種率が rhe Healthy People 2020 の目標にほど遠いのは、経済格差が理由だから、もっと無料接種の範囲を拡げなければならないというアカデミックな記述の傍らで、インタビューでは「必要ないから」って回答が一番多いようです。

実際、「かかったことがないから」打つ習慣のない人や、「昨年かかったから」はじめて打つ人が日本でも多いですね。

インフルエンザワクチンを受けてもインフルエンザと診断されることがある ・・・ ◎ 感染予防の保障はできません。感染予防効果の測定もできません。しかし、確実に重症化を防いでくれます。

インフルエンザワクチンは副作用がある ・・・ ◎ 副反応の報告はありますが、インフルエンザ感染予防、重篤化予防という主作用を忘れずに。

インフルエンザワクチンは嫌われている ・・・ ◎ メディアが流布する悪口もヒントの一つにして、好きかキライか自分で判断してください。