睡眠リテラシー第4回 Objective Summaryの見方

Objective Summaryを作成するための終夜睡眠ポリグラフィー検査には、イスラエルのItamar社が開発した携帯型検査機器、ウォッチパット ユニファイドを使用します。日本ではフィリップス社が扱っています。


PATテクノロジー(Peripheral Artery Tonometry Technology)が、交感神経活性に伴う末梢動脈収縮により変化する血流量を連続的にセンシングして、鼻カニュラ型気流計や複数の脳波電極を用いずに、独自のアルゴリズムで呼吸イベントやレム睡眠、ノンレム睡眠の深度などを検出します。

検査中の睡眠と覚醒を明確に区別することで、従来の携帯型検査機器に比べて、AHIやRDI、ODIの算出に分母として必要な「総睡眠時間」を正確に記録できます。

そのため、入院して行う通称フルPSG、多点感圧センサーを有する睡眠評価装置を用いた終夜睡眠ポリグラフィー検査と比較して、RDIにおけるPearsonの積率相関係数は0.91(p≦0.001、95 % CI:0.85~0.95)、RDI=10 を用いた場合の感度90.9 %、特異度61.9 %、PPV(陽性的中率)78.9 %、NPV(陰性的中率)81.3 %、AUC(ROC 曲線下面積)0.92、AHIにおけるPearsonの関率相関係数は0.91(p≦0.001、95 % CI:0.85~0.95)、AHI=10 を用いた場合の感度78.8 %、特異度100 %、PPV(陽性的中率)100 %、NPV(陰性的中率)75.0 %、AUC(ROC 曲線下面積)0.94という精度を実現しました。


AHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)

:気流が10秒以上停止する無呼吸と10秒以上換気量が50%以上低下する低呼吸の睡眠1時間あたりの平均数。

RDI(Respiratory Disturbance Index:呼吸障害指数)

:無呼吸、低呼吸に呼吸努力関連覚醒(Respiratory Effort-Related Arousal:RERA)を加えた睡眠1時間あたりの平均数。RDIはAHIと同等に評価します。

ODI(Oxygen Desaturation Index:酸素飽和度低下指数)

:酸素飽和度が3%以上低下し、 2分以内に元の値まで戻った睡眠1時間あたりの平均数。



実際の低酸素状況を反映するのはODIですが、本邦の保険診療制度ではAHIが基準になっています。

AHI5以上15未満が軽症、AHI15以上30未満が中等症、AHI30以上が重症睡眠時無呼吸症候群です。


睡眠時無呼吸症の治療には、CPAP(Continuous Positive Airway Pressure:持続性陽圧呼吸)療法、OA(Oral Appliance:口腔内装置)療法、体位療法、外科手術などがあり、複数の治療を組み合わせることも一般的です。

Watch PATによる検査結果で開始できる保険診療としてはOA(AHI5以上)とCPAP(AHI40以上)があります。

また、Watch PATの結果、AHI5以上または医師が必要と判断した場合には、フルPSG(多点感圧センサーを有する睡眠評価装置を用いた終夜睡眠ポリグラフィー検査)を保険診療で受診できます。フルPSGの結果、AHIが20以上だった場合、CPAP療法の保険適応となります。Watch PATはフルPSGとの相関が高いため、Watch PATでAHIが20以上だった場合はフルPSGで20以上になることが多いと言えるでしょう。

精密検査であるフルPSGはWatch PATと同じように自宅で行う方法がありますが、専門施設に入院して、安全精度管理下で行うことを推奨します。当院からは順天堂医院、虎ノ門病院に直接予約が取れますし、他の施設を紹介することも可能です。


Watch PATの波形は横軸が時間です。


一番上の「PAT呼吸イベント」(無呼吸、低呼吸)では、ブルーのバー1本が1回の呼吸イベントを示します。呼吸イベントは連続して起こることが多いので、その場合はブルーの帯状に見えます。

勤労世代成人の正常な呼吸数(1分あたりの呼吸の回数)は、安静時で15回前後ですが、睡眠中は少しゆっくりになって12回前後がよいところです。呼吸数を12回とすると1時間の呼吸は720回、AHIが15だと約21%、5回に1回、呼吸イベントを経験することになります。

AHIは平均なので、実際にAHIが15でも、コンスタントに5回に1回呼吸イベントが起きるわけではありません。

気道を作る口腔内の体積と気道を埋める舌などの軟部組織の解剖学的なバランスは、重力の影響を受けるために、仰臥位では呼吸イベントが起こりやすくなりますが、この傾向については次の段の「いびき/体位」の黒い横線との関係を見ていきます。

黒い線が動かない人は、あまり寝返りを打っていないし、よく動く方は黒い線がよく動きます。仰臥位の姿勢と呼吸イベントやいびきの関係がひと目でわかります。2枚めの表と円グラフの体位統計の欄では、体位ごとのRDI、AHI、ODIや睡眠中の体位の合計時間がわかります。 いびきと体位は、PATテクノロジーではなく、胸に貼り付けたチップ上のセンターで測定しています。

体位依存性の睡眠時無呼吸症にはOAや体位療法が有効なことが多いです。

オレンジのバーの本数は呼吸イベントと同じようにいびきの回数、そしてバーの高さはいびきの大きさを示します。

いびきは多く、大きくても、呼吸イベントも酸素飽和度の低下もない場合は、健康リスクという点からは治療の必要はありません。ベッドパートナーとの関係や旅行の時など社会的な文脈では問題になると思います。口にテープを貼ったり、上下一体型のOAを使用したりして、口呼吸を防ぐと、いびきが小さくなる場合があります。体位依存性のいびきなら、体位療法も有効です。

次の黒い波形が酸素飽和度です。

呼吸イベントと一致、または少し遅れて酸素飽和度が下がる場合、呼吸イベントによる低酸素状態を示していると考えます。診療報酬制度上は、AHIが指標になりますが、呼吸イベントが体に与える影響としては、酸素飽和度の低下が最も重要です。たとえ呼吸イベントの回数が少なくても、それが大きく全身の低酸素化に影響していれば治療が必要です。

今は酸素飽和度計が身近になりましたので、ぜひ、起きている状態で息ごらえをしてみてください。98%が92%になるだけで、びっくりするほど苦しく、こんな状態で目覚めないはずはないと考えることでしょう。

ODIは酸素飽和度が下がる回数を示す指標ですが、回数と同時に酸素飽和度がどこまで下がるのかということも重大です。

次の赤い波形は脈拍数です。心拍数を反映して、自律神経活性を示します。本来、血圧と心拍数は睡眠中にしっかり下がるものです。

最後の段は睡眠相です。REM睡眠では全身の筋が弛緩し、交感神経活性が高まり、脳の活動が活性化します。一般的にREM睡眠では呼吸イベントが増えることが多いです。

睡眠相ごとのRDI、AHI、ODIや睡眠相の割合は表と円グラフで確認できます。深睡眠が20%、REM睡眠が25%を超えるとすばらしいですね。


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