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睡眠時無呼吸症候群診療の保険適用について

睡眠時無呼吸症候群の治療には、体位療法、CPAP療法、OA(口腔内装置)療法などがあり、医科でCPAPを処方する場合と、歯科でOAを作成する場合には、保険診療が適用されます。


CPAPの保険適用の条件は、「AHI40以上の簡易検査結果」、または「AHI20以上のフルPSG結果」が通例となっているため、睡眠時無呼吸症候群による症状に苦しんでいるにも関わらず、「保険でできる治療がない」と告げられてしまう例が非常に多いと感じています。


少なくともOAは、「医科の保険医療機関の担当科医師からの診療情報提供(診療情報提供料の様式に準ずるもの)に基づく口腔内装置治療の依頼を受けた場合」に作成できます。 「睡眠時無呼吸症候群だけど、治療はない」と告げられた方は、当院にご相談ください。

また、「睡眠時無呼吸症候群と診断したけど、次にどうしていいかわからない」という医師も、当院にご相談ください。睡眠歯科診療の専門性の高い歯科に、おつなぎします。


あきらかに睡眠呼吸障害によってQOLが下がったり、心血管リスクが上がったりしている患者に対して、国民の公衆衛生増進のための皆保険制度は、きっと機能するはずです。

保険適用については、管轄地方ごとに解釈が異なるのも事実で、運不運とか口コミとか思い込みとかに左右されている場合も多いのです。


結局、何が正しいかよくわからないまま治療の必要な人々が治療にアクセスできないのは忍びないので、あらためて診療報酬上の通知文言をよく読んで、当院の解釈を公開します。

当院の解釈に誤解がある場合、当該管轄機関から正式に反論していただけたら幸いです。


睡眠段階を評価できる簡易検査


このため、自己負担額2700円(3割負担の場合)で睡眠の評価ができますので、治療へのアクセスが容易になります。詳しくは以下の通知の解釈をご覧ください。


CPAPはもちろんですが、OAの導入にも有利です。

たとえば、REM睡眠優位型や仰臥位優位型の睡眠時無呼吸症候群は、病因のうち、解剖学的なアンバランスが占める割合が強いことがわかっているので、OAを勧めやすいです。


ホルター心電図と組み合わせることによって、さらに多くの評価をすることも可能になります。


専門家の精密な監視下のもとで行う終夜睡眠ポリグラフィー検査には、当然、簡易検査と比較して有利な点がたくさんありますが、高額であり、何よりも大事な時間を奪われます。

そして、病院は決して寝心地のよい場所ではないという点も、睡眠時無呼吸症候群が疑われる方の第一選択として、当院では自宅での簡易検査をお勧めしている理由の一つです。



D237 終夜睡眠ポリグラフィー1 携帯用装置を使用した場合(このコラムでは「簡易検査」と表記)

【通知】


  • 問診、身体所見又は他の検査所見から睡眠時呼吸障害が強く疑われる患者に対し、睡眠時無呼吸症候群の診断を目的として使用した場合に算定する。なお、「C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」を算定している患者又は当該保険医療機関からの依頼により睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置を製作した歯科医療機関から 検査の依頼を受けた患者については、治療の効果を判定するため、6月に1回を限度として算定できる。

  • 鼻呼吸センサー又は末梢動脈波センサー、気道音センサーによる呼吸状態及び経皮的センサーによる動脈血酸素飽和状態を終夜連続して測定した場合に算定する。この場合の区分番号「D214」脈波図、心機図、ポリグラフ検査、区分番号「D223」経皮 的動脈血酸素飽和度測定及び区分番号「D223-2」終夜経皮的動脈血酸素飽和度測定の費用は所定点数に含まれる。

  • 数日間連続して測定した場合でも、一連のものとして算定する。


【解釈】


病名は、「睡眠時呼吸障害(「疑い」含む)」、「睡眠時無呼吸症候群(「疑い」含む)」で算定できる。

数時間連続の測定ではなく、検査結果不良等の事由による短間隔の再検査についての記載はないため、再検査は制限なく可能と考える。

効果判定を目的とする検査の場合は、6月に1回を限度とするが、診断目的の検査と効果判定目的の検査の間隔については、限度の記載がないため、制限なく可能と考える。

「C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」と同時に算定する場合は効果判定と容易に推定できるが、歯科医療機関からの依頼かどうかは、レセプト上、確認できない(診療情報提供書を作成する際には、その宛名や内容等はレセプトには記載しない)。

算定時、診断目的か効果判定かを記載する義務はないが、再検査にしろ、効果判定にしろ、最近の簡易検査から6月未満の間隔で算定する場合は、概要コメントとして記載するのが望ましいだろう。 C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の通知には、「睡眠ポリグラフィー上、睡眠段階が正常化する症例」および「当該治療の開始後最長2か月間の治療状況を評価」との記載があるため、睡眠段階の正常化が測定できる簡易検査は、開始2か月以内に積極的な効果判定目的の実施が望ましいと考えられる。


終夜睡眠ポリグラフィー検査(PSG)は、経験ある医師、技師などにより、「AASMによる睡眠および随伴イベントの判定マニュアル」に準じて視察で判定される。つまり、判定者によって判定結果は同一ではない。通知には判定者や判定方法に対する記載はない。

AHI(無呼吸低呼吸指数:Apnea Hypopnea Index)は、臥床中の無呼吸あるいは低呼吸のイベント回数の総和を、総睡眠時間(TST;stage N1-3とREMの総和)で除した値である。無呼吸はベースラインから90%以上の気流の低下が10秒以上持続する場合を1イベントとし、低呼吸はベースラインから30%以上の気流の低下が10秒以上持続し、3%の酸素飽和度低下、あるいは覚醒反応を伴う場合を1イベントとする。

ところが、通知にあるとおり、簡易検査は「鼻呼吸センサー又は末梢動脈波センサー、気道音センサーによる呼吸状態及び経皮的センサーによる動脈血酸素飽和状態を終夜連続して測定」する検査であり、睡眠と覚醒を区別できない。当然、睡眠段階はわからない。そのため正確なTSTを測定できないので、TSTではなく、臥床時間(TIB)や検査時間で除することとなる。その限界に対して、簡易検査の結果には、AHIではなくRDI(呼吸障害指数:Respiratory disturbance index)と表記されていることが多いが、本来、RDIとは、AHIと

RERAI(呼吸努力関連覚醒反応指数)との和を指す数値である。RERA(呼吸努力関連覚醒反応)は、2呼吸分以上の無呼吸、低呼吸の基準を満たさず、1)呼吸努力の増加、2)鼻圧波形で吸気部の平坦化、3)いびき、4)呼気終末二酸化炭素濃度のイベント前の上昇の4つのうちのどれかがあり、睡眠から覚醒反応を生じた場合を1イベントとするので、やはり、「鼻呼吸センサー又は末梢動脈波センサー、気道音センサー及びPLETHセンサー」だけでは、測定に限界がある。

以上より簡易検査は、精密なフルPSG検査に比べ、表記や判定の方法に関わらず、睡眠時の呼吸障害が過小評価されるリスクが高い。

また、簡易検査機器として認可されている機器の中には、最低限のセンサーの他に、呼吸努力や姿勢(寝相)、睡眠段階を測定できるものがある。



C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2

【通知】


  • 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の対象となる患者は、以下の(イ)から(ハ)までの全ての基準に該当する患者。ただし、無呼吸低呼吸指数(本コラムでは「AHI」と表記)が40以上である患者については、(ロ)の要件を満たせば対象患者となる。 (イ) 無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数及び低呼吸数をいう。)が20以上 (ロ) 日中の傾眠、起床時の頭痛などの自覚症状が強く、日常生活に支障を来している症例 (ハ) 睡眠ポリグラフィー上、頻回の睡眠時無呼吸が原因で、睡眠の分断化、深睡眠が著しく減少又は欠如し、持続陽圧呼吸療法により睡眠ポリグラフィー上、睡眠の分断が消失、深睡眠が出現し、睡眠段階が正常化する症例

  • 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料については、当該治療の開始後最長2か月間の治療状況を評価し、当該療法の継続が可能であると認められる症例についてのみ、引き続き算定の対象とする。

  • 保険医療機関が在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料を算定する場合には、持続陽圧呼吸療法装置は当該保険医療機関が患者に貸与する。

【解釈】


この通知こそ、「簡易検査でAHI40以上」の根拠とされる部分である。D237の簡易検査の解釈で触れたとおり、簡易検査結果は過小評価されることが多いにもかかわらず、簡易検査でAHI20以上、フルPSGでAHI40以上の基準になっているのは、(ハ)として記される、治療前の睡眠の分断化や深睡眠の減少、及び治療後の睡眠の分断の消失や深睡眠の出現等の睡眠段階の正常化の確認が、簡易検査ではできないからだと考える。

反対に、簡易検査として認可されている機器であっても、睡眠段階の検証ができるものならば、治療前の睡眠段階の乱れ及び治療後の睡眠段階の正常化を確認できるため、管理料の適用に該当すると考える。

その場合、前項でも述べたが、治療開始から2か月以内に、睡眠段階を評価できる方法で、効果判定検査を行わなければならない。しかし、「当該療法の継続が可能であると認められる症例についてのみ、引き続き算定の対象とする」の「引き続き」という部分に注目すると、2か月以内であって、効果判定検査結果が出る前の最高2回は算定できると解釈できる。

患者が個人で購入したCPAPに対しては、当該管理料は適用できない。



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