自宅で行う★睡眠検査(HSAT:Home Sleep Apnea Test)
睡眠を可視化する手段として、もっともお勧めするのが、自宅で行なう睡眠検査、【携帯用装置を使用した終夜睡眠ポリグラフィー】、通称、簡易型PSG(ポリソムノグラフィー)検査です。一度の睡眠でたくさんの情報が得られます。(ACCJによる医療政策提言解説コラムはこちら)
PSGのP(ポリ)は「複数」、S(ソムノ)は「睡眠」、G(グラフィー)は「記録」です。
睡眠に関する複数の項目を客観的に連続、同時記録する、医療として認められている臨床検査です。
複数の項目とは、呼吸の状態(無呼吸や低呼吸などの呼吸イベント:AHI、RDIなど)、「いびき」の状態(大きさや頻度)、循環動態(プレシスモグラフィーによる脈拍、脈波)、酸素飽和度(全身の酸素か状態を評価するための血中の酸化ヘモグロビンの割合)とその低下指数であるODI、体位(姿勢、寝相)、睡眠深度(深睡眠・浅睡眠・REM睡眠など)・・・
自分ではけっして知ることのできない情報ばかりですね。
これらの他覚的な結果と自覚症状を組み合わせることで、睡眠障害の程度や特徴、睡眠の癖がわかり、その課題解決のための提案ができるようになります。
難しい内容は以下にお伝えしますが、この検査の一番、すばらしいところは「いつも通り、自宅のベッド(ふとん)と枕で眠れること」です。
あらゆる「生活習慣病」は、生活の中で起こっていて、医療機関はむしろ、アウェーです。
病院で測ると血圧が高くなってしまう「白衣高血圧」の例でわかるように、生活習慣病を普段の生活にとってはアウェーの医療機関で測定することによる誤差はイメージできるでしょう。
睡眠ももちろん、生活習慣の一部、その検査を生活習慣の中で完結できることは、非常に有利です。
いつもと同じ家の食事、いつもと同じ家のお風呂のあと、いつもと同じパジャマで、検査してみて下さい。酔うといびきがひどいなら、お酒を飲んだあと、テストするのもよいでしょう。
そんな気楽さを可能にするのが、株式会社心陽が推奨する、イスラエルItamar Medical製の睡眠評価装置「ウォッチパット(WatchPAT)」を用いた検査です。(日本経済新聞による関連記事はこちら)
PAT(Peripheral Artery Tonometry:末梢動脈血流測定)テクノロジーにより、交感神経活性に伴う血管収縮により変化する末梢の血流量をセンシングして、鼻カニュラ型気流計や複数の脳波電極を用いずに、呼吸イベントや睡眠深度を検出します。
最新型では、PATプローベと酸素飽和度モニタリングプローベを合体させたUPAT(ユニファイドPAT)プローベでさらに簡易化を実現しました。
だから、喉元のちょっとしたシール、手首に巻くバンド、指先のサックだけで、検査が可能です。
顔が空いているので、CPAPを装着したまま、治療効果判定にも用いることができます。
これを簡易型というからには、当然、より詳細で複雑な睡眠検査が存在します。それが、【安全精度下で行なう終夜睡眠ポリグラフィー】、通称フルPSGです。
複雑なフルPSGは、日本の格安診療報酬制度による検査料金でも5倍以上かかる検査です。検査料金以外にも、入院に伴うコストがかかります。自宅でもできますが、おすすめはしません。
保険診療の診療報酬は簡易型で900点、フルPSGで4760点です。フルPSGの実施施設は限られます。どちらも検査料金のほか、判定料と受信料がかかり、3割負担の場合、初診対面診療では3560円の自己負担額になります。
複雑な検査では、図のように、たくさんの電極シール、耳にかけて鼻孔に挿入する気流モニター、胸とおなかに巻くベルト、そこからつながるたくさんの管が必要になります。
もちろん、複雑な検査の方がより精密で、多くの情報が得られますが、受検者には、時間や費用というコストがかかります。
専門の医師がフルPSGを必要と判断するのにも簡易検査がヒントになりますし、制度上もエビデンス上も簡易検査のみで、有効な治療を開始できる機会は多いのです。
睡眠時間を捻出するのもたいへんな、多くの働く人々にとっては、まずは家庭でできる簡易検査(HSAT)で自分の睡眠を可視化するのが現実的でしょう。
臨床研究により、ウォッチパットによる簡易検査では、睡眠深度やAHIの検出力が複雑な検査と有意に相関するという結果が出ています。(「有意」の説明はこちらのコラムで)