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ストレスを知る(3)睡眠でストレスをクリアする

ストレスレベルは血圧でわかる


ストレスを知る(2)ヤーキーズ・ドットソンの法則で法則の末尾でお伝えしたとおり、ユーストレスには、パフォーマンスを高める、というよい作用しかないかというと、そうではありません。

ユーストレスには心理的、感情的にはよいことしかありませんが、生物学的には犠牲を払います。


パフォーマンスを出すには、エネルギー源が必要ですが、そのエネルギー源を運搬するのが、血液です。 ストレスがかかると、たくさんのパフォーマンスを出すために、交感神経は、ストレスホルモンによって、血圧も脈拍も上げて、心拍出量を増やして、たくさんの血液を臓器に届けます。

その分、血管壁に与える物理的なストレスは大きくなっています。しかし、血管に物理的なストレスがかかっていても、元気な気持ちになったり、嫌な気持ちになったりするなど、感情に変化はありませんので、自覚的に血管のダメージに気付くチャンスはありません。


睡眠も血圧も生命活動、健康、寿命にとっては、すごく重大な事項ですけど、異常だから必ず自覚症状があるかというとそういうわけではないんです。

だから血圧測定もすごく大事ですが、睡眠の他覚検査も大事です。

どちらも意外なほど簡単ですから、皆様、健康の第一歩として、やってみましょう!

この動脈波形は私にとっては非常に馴染みのあるもので、麻酔中に動脈にカニュレーションしてこの波形をリアルタイムでモニターして、患者の循環動態を把握していました。


ストレス対策は、メンタルではなく、血管内皮を強化せよ!


パフォーマンスを出すときだけ、血圧や脈拍が高まる分には問題はありませんが、睡眠不足や睡眠障害、高血圧症の放置などにより動脈硬化が進行していると、突然死のリスクが高まります。

突然死を避けるために、禁煙や生活習慣病の治療は非常に有効ですが、それ以上に效果が高いのが睡眠です。1日の3分の1、しっかり睡眠することによって、私たちは自律神経のバランスを整え、心血管系を休ませています。


私の恩師、ハーバード大学公衆衛生大学院兼ハーバード大学医学部教授のステファノス・カレス先生は、警察官や消防士などの高ストレス職の健康について研究しています。睡眠研究の権威でも、地中海式ダイエットの権威でもあります。

警察官や消防士などは、まさに火事場の馬鹿力が通常業務なので、日々、現場でとてつもないストレスの元、パフォーマンスを発揮します。高ストレス職の警察官、消防士などが、特別な肉体を持っているのかというとそうではなくて、実際に高ストレス職の寿命は短く、心血管系イベントの発症リスクが高く、これは日本の職業別の死因、死亡率でも同じ結果が出ています。


健康診断&睡眠チェックで、血管ストレスからサバイブできる


ストレスは悪者ではなく、むしろパフォーマンスの栄養ですが、その栄養の効果を充分得るためには、感情マネジメントだけでなく、血管内皮を鍛えることが必要です。どうやって、血管内皮を鍛えるのか? その答えが「睡眠マネジメント」です。ついでに健診結果を参考に、血圧、脂質、耐糖能のマネジメントをすれば完璧です。


メンタルヘルスのケアは大事です。ただ、たまたま私は、精神科医ではなく、麻酔科医です。麻酔科医の私はいつも、心臓や肺や脳を意識してきました。血管内皮を意識してきました。

皆さんにとって、血管内皮なんてあまりリアリティがないと思いますが、多くの突然死は、血管内皮に関係しているのです。


人間の体は、周囲からの刺激に意図的、あるいは反射的に反応する脳と脊髄からなる中枢神経と交感神経と副交感神経のトレードオフでバランスを取る自律神経の2つの司令塔により管理されています。

心臓の拍動や呼吸など、意識とは無関係に勝手にやっている生命活動を担当するのが自律神経、意図的な生命行動を司るのが中枢神経です。


私は精神科ではないので、精神科が中枢神経にフォーカスしているのかどうかは知りませんが、麻酔科医は自律神経にフォーカスして、外科手術という規格外のストレスに対抗して、生命の恒常性を維持します。


働く人のストレスの日内変動


この実験では、同じメンバーにやりがいのある仕事と、退屈な仕事をさせた場合の自律神経の状態を観察しました。


やりがいのある仕事では、パフォーマンスを出す必要があるので、どんどんストレスが高まります。

終業時は、1日で1番の高ストレス状態です。

しかし、やりがい群は切り替えが早いです。

仕事が終わると、ストレスを負荷してパフォーマンスを上げていく必要がなくなるので、仕事を終え、家でくつろぐ頃には、すっかりストレスを手放しています。パフォーマンスを上げるべきタイミングとそうでないタイミングにメリハリがあるんですね。健康な人はこのまま、副交感神経優位の状態で8時間睡眠して、心臓や血管を休めます。特に深睡眠では、傷んだ血管の修復まで済ませます。起床後は、ストレスホルモンのひとつ、コルチゾルが分泌されて、交感神経優位の臨戦状態になります。昨日までのストレスは蓄積されていません。


反対に、ストレスなしでもやれてしまう退屈な仕事を続けていると、自律神経のメリハリが失調します。仕事中は、ストレスレベルに変化はありませんが、感情は概ねネガティブです。仕事でストレスを増やしていないので、仕事をやめてもストレスは減りません。自律神経失調状態では必ず不眠を伴うため、心臓や血管も休まりません。

睡眠はこのように自律神経のバランスを正常化して、イザというときに適切に交感神経の力を発揮するというしくみで生産性を高めます。

どんな人にもパフォーマンスが向上から減衰に変わるヤーキーズ・ドットソンの法則の頂点に当たるストレスレベルがあります。睡眠を挟むと、そのストレスレベルを日々、引き上げていくことができます。

睡眠の前半には、前日までの自分にとってのストレスレベルの頂点を明確にするための大掃除が行われ、睡眠の後半には、それを引き上げるための準備を行います。

ストレスがあるから不眠になるのではなく、睡眠があるからパフォーマンスにつながるストレスのレベルを引き上げられるのです。

令和の世界で、これを証明してくれているのが、大谷翔平さんです。彼が睡眠を大切にしているのも、彼が毎日アップデートしているのも、周知の事実です。


おやすみなさい。。。

 
 
 

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