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【睡眠健康セミナー】ご質問ヘの回答 ①Power Nap

更新日:11 時間前

第98回産業衛生学会総会5月17日土曜日13時からのランチョンセミナーへのご参加、誠にありがとうございました。


おかげさまで無事に終えることができました。


主催・登壇者は西川株式会社・西川会長と株式会社心陽・石田陽子だったはずですが、蓋を開ければ竹林正樹先生オンステージ with 浜口先生という様相であったような・・・・・・登壇後のサインの列も、竹林先生が最長という・・・・・・(笑)

過去、最も発言した指定発言者として、歴史に残ったのではないでしょうか?!


当日、18のご質問をいただきました。

すべてのご質問には答えられませんでしたので、こちらで回答します。

西川株式会社へのご質問については、ご回答をお願いしているので、いただきましたら、掲載します。



本日は、夜の睡眠とは別に、勤務中の睡眠についての質問を集めました。



他国や他社の事例などもあれば教えていただきたいのですが、具体的に仮眠文化を日本の企業で浸透させていくにはどのような工夫がありますでしょうか?


私は「仮眠文化」という言葉について、よく知りませんが、調べたところ、「職場において昼間に短時間の睡眠(仮眠)を取ることを、生産性や健康維持の観点から容認・推奨する風土や制度」で、欧米では【Power Nap(パワーナップ)】と呼ばれる」そうです。


なるほど、健康経営度調査の、以下の部分ですね。

  1. リフレッシュルームや仮眠室を設置している。

  2. パワーナップ等仮眠制度を実施している。


つまり、このご質問に健康経営優良法人認定事務局が回答するとすれば、「リフレッシュルームや仮眠室の設置、パワーナップ等仮眠制度の実施」となるでしょう。


🏢 他国・他社の事例


  • Google(米国):ナップポッド(仮眠カプセル)を導入

  • Zappos(米国):仮眠スペース+フレックスタイムを組み合わせて運用

  • オーストラリアの看護業界:夜勤中の戦略的仮眠を推奨(疲労事故防止)

  • アビームコンサルティング × ヤマハの「仮眠システム」

    アビームコンサルティングは、社員をビジネス界のアスリート「Business Athlete」として定義し、プロフェッショナルとしてお客様の継続的な企業価値の向上に貢献するために、社員自らが健康をマネジメントし高いパフォーマンスを維持することを重要視しています。

    社員の健康増進および生産性向上を目的に、以前からパワーナップに力を入れていて、私も学会で同じセッションになったことがあります。

    最近は、ヤマハが研究を進めている生体リズムに連動した快眠音で心地よい入眠を支援する「仮眠システム」をトライアル導入、活用し、従来推進してきた「Power Nap」の質をさらに高めることを狙いとしています。

    そのうち、効果検証の発表があるかもしれませんね。

  • 三菱地所の「パワーナップ制度」

    三菱地所は、2018年1月に仮眠制度を導入し、仮眠室を整備、12名の被験者で、ニューロスペースと共同実証実験しました。そして実験期間中、JINS MEMEで測定した集中スコアは、後半は前半と比較して、約5ポイント向上、アンケートでは「仮眠を取ることで作業の生産性が良くなった」と回答した割合は8名、「仮眠を継続したい」と9名が回答しました。

  • OKUTAの「パワーナップ制度」

    住宅リフォーム会社のOKUTAは、社員の健康と持続可能な働き方を支援するため、パワーナップ制度を導入、眠くなったタイミングで、15分〜20分程度の仮眠を取ることができる制度で、場所や時間帯に制限はなく、各自の判断で実施されています。



昼寝のエビデンスについて


よく、仮眠はパフォーマンスを改善するエビデンスがありますよね? というコメントをいただきますが、よく引用される、こちらのNASAの例について考えてみましょう。


約26分の昼寝で、注意力が54%、パフォーマンスが34%改善したという画期的な研究です。


この実験では、実際の国際線運航中(LAX~オークランド:約10時間のフライト)に勤務する3人編成の乗務員37名のうち、19名には40分間の仮眠OK機会を与え、18名には与えずに、その2群のパフォーマンスと注意力をPVT(精神運動覚醒検査:Psychomotor Vigilance Test)で以下のタイミングで比較しました。

PVTは睡眠領域で、他覚的な覚醒レベルを測定する一般的な検査で、 ランダムな間隔で表示される刺激に反応する速度や正確性を測定します。この実験では、パフォーマンスを、反応時間の平均値(Mean RT)や最速反応などをもとに評価し、注意力をラプス(Lapses)という反応までの時間で測っています。


PVTは起床後、10時間もすると如実に減衰し続け、起床後24時間は、本来、回復することはありません。

この図は、西川会長もプレゼンテーションに引用していましたが、1997年、Nature掲載のDrew Dawson先生のあまりにも有名な研究、Fatigue, alcohol and performance impairmentのPVTの推移です。

私も、ほぼ必ず、セミナーで触れます。




飛行開始約6~8時間に40分間、座席をリクライニングし、アイマスクを装着、アクチグラフによる睡眠時間の平均が25.8分で、仮眠直後のPVTの始業前のPVTに対する減衰幅がコントロール群に比べて、注意力低下が54%、パフォーマンス低下が34%少なかったというのが今回の研究ですが、乗務終了後、その差は小さくなっていたそうです。


つまり、この結果から言えることは、仕事の性質上、起床後12時間以上、注意力を維持しなければいけない業務の場合は、途中で休憩をはさんだほうがよい、ということであって、パワーナップによって、たとえば始業前のPVT以上に迫ることはありません。


多くの働く人々の一般的な勤務時間は、1時間の休憩を挟む8時間です。休憩の1時間の使い方として、楽な姿勢で目を閉じてリラックスをすることが、悪い選択だとは思いませんが、わざわざ昼寝の時間をとって残業をする理由にならないことは確実です。


一般的な勤務体系の場合、私は昼寝を全く勧めません。睡眠に適した時間であっても、本来15分程度の睡眠時間をかけて、眠りについてほしいのです。

この研究では脳波を測っていないので、アクチグラフで体の動きが検知されない間、脳波上の睡眠をしているかどうかはわかりません。アクチグラフはその性質上、感度は良いけど特異度は低いので、静かに動かない人を本当に眠っているのかどうか見分けることは苦手なのです。

つまり、この26分のNAPが、睡眠かどうかは確定できない一方、多くの睡眠不足の日本人は、40分リラックスすると深睡眠に達してしまいます。


意識高め、パフォーマンス高めのパイロットだからこそ出た結果ではないかな、と思います。


仮眠文化を広めるためにできる工夫


というわけで、私の持論では、一貫して、仮眠は不要、仮眠文化を広める必要はありません!

労働者は、睡眠負債を返済し、起床後12時間は仮眠しないでもパフォーマンスが保てるよう、事故保健義務を果たすこと、

同時に、企業は、起床後12時間以上は業務をしないでよいよう、長時間労働をさせないこと、

このシンプルな2つの文化を広めることだけが必要です。


ただし、NASAの例にある長距離パイロットのように、業務上、10時間以上の集中力の維持を求められる職場では、仮眠に意義があるといえます。

その場合も注意しなくてはいけないのは、この実験ではあくまで仮眠直後の効果しかないということ、翌日や、10時間後以降のパフォーマンスについては触れられていないということです。

業務上、16時間以上、覚醒を続けなければいけない場合は、翌日、しっかり寝坊して、睡眠負債を返済する必要があります。

人権の尊重のためにも、20時間以上覚醒を続けなければいけない業務は、避けたいですね。


多くの日本企業のアンケートでは、仮眠が好ましく捉えられていますが、これは長時間飛行のパイロットの例とは話が違い、労働者の睡眠不足を反映していると思います。


職場では、どう仮眠するか?ではなく、どう夜の睡眠をしっかり取るか?どうすれば仮眠の不要な職場になるか?を考えてほしいです。



インフラに予算を割けない場合、自席でうつぶして短時間の睡眠をとることを推奨することはいかがでしょうか。


素晴らしいと思います。


前述のように、私は睡眠不足の方への仮眠を推奨していません。

MSLT(反復睡眠潜時検査:Multiple Sleep Latency Test)は、主に過眠症(特にナルコレプシーや特発性過眠症)などの診断に用いられる、睡眠専門分野では非常に重要な検査です。

具体的には、起床の3時間後から2時間おきに5回、眠るのに最適な環境で、脳波計をつけて横になります。もし、15分以内に、脳波上の睡眠が開始すれば、有所見です。

つまり、病気のない方は、起床後10時間以内には、眠れる条件が整って横になっても、15分以内に眠らないはずなんです。


反対に、仮眠という名の休憩をするときに、あまり睡眠に適した条件を整えすぎると、仮眠のつもりが睡眠が始まってしまい、結局そのイレギュラーな睡眠が社会的時差ボケの原因となり、夜の睡眠の質を下げてしまう結果になります。


そのため、どうしても仮眠をしたいのならむしろ、自席で顔をうつぶせる休憩方法は非常に理にかなっています。それを制度化してしまえば、前述の健康経営度調査の「パワーナップ等仮眠制度を実施している。」も、クリアできちゃう、と、私は思います。


こちらの西川のこねむりプラスのシリーズもおすすめです。

そう簡単に、ちょっと寝ルームが設置できるわけではありませんが、これを休憩室に置くだけで、「リフレッシュルームや仮眠室を設置している。」もクリアできると私は思います。


私の大ボスである、内村直尚先生は、高校での昼寝制度の導入で、あえて、着座のまま顔をうつぶせるスタイルを推奨しました。

職場でも横にならずに座位のままリラックスする方法が、大変おすすめです。


ちょっと寝ルームのような空間は、うちの会社にもありますが、利用率が低いです。他者の目が気になるようです。どう克服できますか?


こちらは、セミナーで取り上げられた質問ですね。 西川会長のように、トップ自ら利用する、というのは、健康経営における最高の旗振りだと思います。


西川株式会社の本社に設置されているちょっと寝ルームは、見学もできるので、ご興味があれば、連絡してみてください。

こねむりプラスの枕も実際に触れます!


本日は、3つのご質問に回答しました。

残り15のご質問には、明日以降、回答します!!


ランチョンセミナーで配布した資料は、こちらからでウンロードいただけます。






ブースで流していた動画はこちらです。



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