衛生管理者と産業医を、必ず衛生委員会の委員とすることが法令で義務付けられています。
「都合でどちらかが欠席した場合、衛生委員会は成立しなくなる」と考えている企業がありました。
そこで当社が、東京、神奈川、大阪の労働局健康課に問い合わせたところ、「衛生管理者や産業医が欠席したからといって、衛生委員会は不成立とはいえない」というご回答を得ました。
法定産業保健の実施において、こんなふうに、「これってどうなの?」と疑問が生じたら、当局に質問するのをオススメします。考えてわかることではないので、考えても無駄です。
とはいえ、頭で考えても、「『衛生管理者』『産業医』を衛生委員会の委員とするのは必須」だとしても、全委員が参加しない場合、委員会が成立しないという公的判断はありえないという予想はできますよね。
もちろん、前回のブログでお伝えしたとおり、法令を守るために、いわゆる社内のローカルルールを法令より厳しい設定にするのは悪い選択肢ではありません。
それにしても、全員出席しなければ、「不成立」は極端ですね。
極端とはいえ、企業として、そこまでの水準を求めたいという強い意志があるのなら、「産業医と衛生管理者が、各1名以上出席した場合のみ、委員会が成立する」ことを明示する委員会規定を定めてください。
当局の見解としては、そのような明示がある場合には、「不成立としてもよい」ということでした。
せめて、衛生管理者や産業医欠席の衛生委員会が連続したような場合にのみ、委員会スケジュールを見直すなどの再発防止対策を提出するという程度のルールでよいと、私は思います。
委員会の規定や要領に、総勢X名の委員のうち、Y名が出席すれば催行する、Y名出席できないときは、日程を調整すると明示してもよいでしょう。
反対に、「衛生管理者や産業医が出席できなかった場合は、議事録の確認を行う」などと、欠席でも成立するような規定を作っておいてもいいですね。
実際に、衛生管理者、産業医にかかわらず、欠席した委員には、議事内容を何らかの方法でアップデートさせるしくみは作ってください。
衛生委員会の委員は、従業員への周知という重要な役割があります。委員の欠席によって、情報の漏れる従業員が出てしまわないようにしましょう。
そもそも全委員にその他の業務があるのが一般的なので、効率を重視して、衛生委員会の定例開催日時を第X◯曜日やY日と固定するのは合理的です。
それが土日祝日などの公休日に当たれば、日程変更するのが妥当ですが、委員の誰か1名の休みと重なったからといって、毎回再調整していては埒が明きません。
事故や交通機関の影響などで、急な欠席になる場合もあります。
公休日の存在しない企業では、たとえ土日祝日でも開催されています。
これから衛生委員会を設置する企業では、優先順位が高い衛生管理者、産業医の都合に合わせて、衛生管理者と産業医の出席しやすい定例日程を選択し、その日程に出席しやすい委員を選ぶという手もあります。
そのため、衛生管理者や産業医が交代したり、シフト変更したりするタイミングで、衛生委員会の日程を再考するのは、非常に合理的だと考えます。
決議機関としての機能を保つために、必ず委任状の提出か代理出席者を求めるような方法も、前述の情報格差が発生しない対策として有用ですね。
【参考:労働安全衛生法 第18条】
(衛生委員会)
第十八条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、次の事項を調査審議させ、事業者に対し意見を述べさせるため、衛生委員会を設けなければならない。
一 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること。
二 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること。
三 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること。
四 前三号に掲げるもののほか、労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
2 衛生委員会の委員は、次の者をもつて構成する。ただし、第一号の者である委員は、一人とする。
一 総括安全衛生管理者又は総括安全衛生管理者以外の者で当該事業場においてその事業の実施を統括管理するもの若しくはこれに準ずる者のうちから事業者が指名した者
二 衛生管理者のうちから事業者が指名した者
三 産業医のうちから事業者が指名した者
四 当該事業場の労働者で、衛生に関し経験を有するもののうちから事業者が指名した者
3 事業者は、当該事業場の労働者で、作業環境測定を実施している作業環境測定士であるものを衛生委員会の委員として指名することができる。
4 前条第三項から第五項までの規定は、衛生委員会について準用する。この場合において、同条第三項及び第四項中「第一号の委員」とあるのは、「第十八条第二項第一号の者である委員」と読み替えるものとする。
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