睡眠時無呼吸症候群診療の保険適用について
2026年6月診療報酬改定に伴い、加筆修正しました。(最初の投稿日は、2024/4/15)
睡眠時無呼吸症候群の保険治療
睡眠時無呼吸症候群の治療には、体位療法、CPAP療法、OA(口腔内装置)療法などがあり、医科でCPAPを処方する場合と、歯科でOAを作成する場合には、保険診療が適用されます。
体位療法には保険は適用されませんが、「仰向けで寝ない!」ってだけなので、特に医療機関で医療者が独占することでもありません。
仰向けで寝やすい枕より厚みのある枕で、脇に抱き枕などを用意して横向けで寝るのがオススメです。
CPAPの保険適用の条件は、「AHI30以上の簡易検査結果」、または「AHI15以上のフルPSG結果」が通例となっているため、睡眠時無呼吸症候群による症状に苦しんでいるにも関わらず、「保険でできる治療がない」と告げられてしまう例が非常に多いと感じています。
そんなのは嘘ですよ! 医師たるもの、「打つ手がない」などと気軽に告げないでほしい。
体位療法もあるし、OAは、「医科の保険医療機関の担当科医師からの診療情報提供(診療情報提供料の様式に準ずるもの)に基づく口腔内装置治療の依頼を受けた場合」に作製できます。
つまり、医師が「打つ手がない」というかわりに、歯科に紹介状を書いてくれさえすれば、保険で治療ができます。
「AHIが5以上、または検査結果と臨床所見で睡眠時無呼吸症候群を疑うけど、簡易検査で30未満、精密検査で15未満だから、どうしていいかわからない」という医師は、第一にかかりつけ歯科医に電話で作成の可否を聞きましょう。電話すれば教えてくれますよ。
事務職に頼んで、ホームページで作製を保証している近隣の歯科をピックアップしておくのもオススメです。
高い専門性がお好みなら、睡眠学会認定、睡眠歯科学会認定歯科リストをご覧ください。
睡眠呼吸障害は将来の心血管イベントリスクを上げるだけでなく、毎日の覚醒の質、QOLを障害します。
国民の公衆衛生増進のために整備された皆保険制度を活用しましょう!
CPAPもOAも保険が適用されるのは、世界で日本だけ!! もっと活用しましょう。
保険適用については、管轄地方厚生局ごとに解釈が異なるのも事実で、運不運とか口コミとか思い込みとかに左右されている場合も多いです。
結局、何が正しいかよくわからないまま治療の必要な人々が治療にアクセスできないのは忍びないので、あらためて診療報酬上の通知文言をよく読んで、当院の解釈を公開します。
当院の解釈に誤解がある場合、当該管轄機関から正式に反論していただけたら幸いです。
こう書いて、公開してから2年以上、反論はありませんので、ご安心ください。
睡眠段階を評価できる簡易検査
一般的に「簡易検査」は、鼻カニュラ型気流計を用いて、両鼻孔の気流から「無呼吸低呼吸イベント数」を測定します。同時に、酸素飽和度や脈拍、寝相やいびきも測定する必要がありますが、「睡眠時無呼吸症候群の検査」という割には、全く睡眠についての測定はしません。
このため自己負担額2700円(3割負担の場合)で睡眠の評価ができますし、頭頸部にはわずらわしいモニターを着けないで済みます。
まさに安くて楽なので、治療へのアクセスが容易になります。
CPAPやOAの効果判定にも便利です。
通常の簡易検査では得られない睡眠の情報が得られるため、不眠症の原因となる睡眠誤認の発見等、他の睡眠障害の診療にも有用です(保険適用はあくまで睡眠時無呼吸症候群)。
CPAPはもちろんですが、OAの導入にも有利です。
たとえば、仰臥位のAHIが非仰臥位のAHIの2倍以上である体位依存型睡眠時無呼吸症候群は、病因のうち、解剖学的なアンバランスが占める割合が強いことがわかっているので、OAを勧めやすいです。
また、AHIが低くてもRDIやRERAが高く、自覚症状が強いUARSやCOMISを検出しやすく、この場合もOAが驚くほど奏功します。
専門家の精密な監視下のもとで行う終夜睡眠ポリグラフィー検査には、当然、簡易検査と比較して有利な点がたくさんありますが、高額であり、何よりも大事な時間を奪われます。安さと楽さには、大きな差があります。
そして、病院は決して寝心地のよい場所ではないという点も、睡眠時無呼吸症候群が疑われる方の第一選択として、当院では自宅での簡易検査をお勧めしている理由の一つです。
2026年6月からは、3750点(3割自己負担額:11250円)だった在宅精密検査の診療報酬額が2180点(同:6540円)に引き下げられました。
このご時世に、まさかの42%プライスダウンです。
この引き下げが、現場を混乱させている元凶ですが、患者にとっては朗報です。
D237 終夜睡眠ポリグラフィー1 携帯用装置を使用した場合(このコラムでは「簡易検査」と表記)
【通知】
問診、身体所見又は他の検査所見から睡眠時呼吸障害が強く疑われる患者に対し、睡眠時無呼吸症候群の診断を目的として使用した場合に算定する。なお、「C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」を算定している患者又は当該保険医療機関からの依頼により睡眠時無呼吸症候群に対する口腔内装置を製作した歯科医療機関から 検査の依頼を受けた患者については、治療の効果を判定するため、6月に1回を限度として算定できる。
鼻呼吸センサー又は末梢動脈波センサー、気道音センサーによる呼吸状態及び経皮的センサーによる動脈血酸素飽和状態を終夜連続して測定した場合に算定する。この場合の区分番号「D214」脈波図、心機図、ポリグラフ検査、区分番号「D223」経皮 的動脈血酸素飽和度測定及び区分番号「D223-2」終夜経皮的動脈血酸素飽和度測定の費用は所定点数に含まれる。
数日間連続して測定した場合でも、一連のものとして算定する。
診療録に検査結果の要点を記載する。(2026年6月追加)
【解釈】
病名は、「睡眠時呼吸障害(「疑い」含む)」、「睡眠時無呼吸症候群(「疑い」含む)」で算定できます。
数時間連続の測定ではなく、検査結果不良等の事由による短間隔の再検査についての記載はないため、再検査は制限なく可能と考えます。ただし、コメントは必要でしょう。
効果判定を目的とする検査の場合は、6月に1回を限度とするが、診断目的の検査と効果判定目的の検査の間隔については、限度の記載がないため、制限なく可能と考えます。つまり、6月と7月に検査をした場合、1~6月分を6月に、7~12月分を7月に、という解釈ができます。
「C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」と同時に算定する場合は効果判定と容易に推定できるが、歯科医療機関からの依頼かどうかは、レセプト上、確認できません(診療情報提供書を作成する際には、その宛名や内容等はレセプトには記載しないため)。
算定時、診断目的か効果判定かを記載する義務はありませんが、再検査にしろ、効果判定にしろ、最近の簡易検査から6月未満の間隔で算定する場合は、概要コメントとして記載するのが望ましいと考えます。
C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の通知には、「睡眠ポリグラフィー上、睡眠段階が正常化する症例」および「当該治療の開始後最長2か月間の治療状況を評価」との記載があるため、睡眠段階の正常化が測定できる簡易検査は、開始2か月以内に積極的な効果判定目的の実施が望ましいと考えられます。
注(今回追記):診療報酬改定の具体的な文言としては確認できなかったのですが、2026年6月から、診療情報提供料を算定する際、必須コメントとして宛名を記入するようになりました。
宛名のない算定はしないので、なんの面倒でもなく、むしろ、ホッとしているくらいです。
ただし、OA作製依頼の診療情報提供時の宛名が、次回の効果判定検査と紐付けられるかというと、全くそういうことはないでしょうね。
ちなみにこの2年間、6か月以内の効果判定への審査は、だいたい半々でした。
たまたま最近は、検査が2か月待ちなので、半年後の実施になっています。
また、付け加えられた検査結果の診療録明記も、なんだかへんてこで、日本の保険診療上、無診察で検査を処方することはできず、検査結果を判定して説明する料金(睡眠検査の場合は、脳波判定料180点)も検査請求時に算定されます。
皆様がこれまで受けているすべての検査も同様に、検査を処方したときに結果説明料金が算定されています。
多くの国民が、「病院で検査を受けたら、本当にヤバい場合は結果を知らせてくれるだろう」と期待していますが、むしろ医療機関は患者に対して受診を促したり、受診意図がないのにこちらから結果をお知らせしたりするのは禁止されており、どんなに本人の命に至急関わる重大な結果であっても、本人が受診しない限りは結果を伝えません。
だから診療録に書けるのは、検査処方後に受診してくれたタイミングなんだけど、算定の条件に書くのはおかしいですよね、という助言をする人すら、意思決定の場にいないようですね。
D237 終夜睡眠ポリグラフィー1 3 1及び2以外の場合
精密検査「終夜睡眠ポリグラフィー1」(PSG)は、このたび、イ 安全精度管理下で行うもの(4,760点)、ロ 保険医療機関内で又は訪問して実施するもの(3,570点)、ハ その他のもの2,000点の3種類となり、在宅検査はハとして、42%プライスダウンしました。
今回の42%プライスダウンが業界にどんな波紋を投げかけたか、少し脱線すると、もともと睡眠検査も血液検査も検査代理店業者もそんなに得していないというか、むしろ、ものすごく損しているパターンが圧倒的に多く、その上、大病院にはボリュームディスカウントがあるのに、弱小クリニックにはない、診療報酬には消費税がないけど仕入れには消費税があり、など山のような理由で、提供サイドは以前からボランティアでした。
それでも治療開始のきっかけになればと苦しんでいたのに、この変更、愚痴を言えばキリがないけど、正直者がバカを見る構造です。
実は睡眠検査は、経験ある医師、技師などにより、「AASMによる睡眠および随伴イベントの判定マニュアル」に準じて視察で判定される。つまり、判定者によって判定結果は同一ではないにもかかわらず、通知には判定者や判定方法に対する記載義務はありません。
検査結果には技師名が記載されている場合もありますが、されていない場合もあります。
技師が判読している場合もありますが、AIや内蔵アルゴリズムによる自動判定の場合もあります。
どちらの場合も点数は一緒です。
ちなみに名人級の技師A氏、B氏、C氏、そしてAIの判定結果、6通りの組み合わせでほぼ全て、一致率は70%程度でした。
AHI(無呼吸低呼吸指数:Apnea Hypopnea Index)は、臥床中の無呼吸あるいは低呼吸のイベント回数の総和を、総睡眠時間(TST;stage N1-3とREMの総和)で除した値です。
無呼吸はベースラインから90%以上の気流の低下が10秒以上持続する場合を1イベントとし、低呼吸はベースラインから30%以上の気流の低下が10秒以上持続し、3%の酸素飽和度低下、あるいは覚醒反応を伴う場合を1イベントとします。
ところが、通知にあるとおり、簡易検査は「鼻呼吸センサー又は末梢動脈波センサー、気道音センサーによる呼吸状態及び経皮的センサーによる動脈血酸素飽和状態を終夜連続して測定」する検査であり、睡眠と覚醒を区別できません。
当然、睡眠段階はわかりません。
そのため正確なTSTを測定できないので、TSTではなく臥床時間(TIB)や検査時間で除することとなり、簡易検査では、AHIではなくREI(呼吸イベント指数:Respiratory event index)と表記します。
ほかにも、RERAI(呼吸努力関連覚醒反応指数)やRERAIとAHIとの和を指すRDI(呼吸障害指数:Respiratory disturbance index)という尺度がありますが、通知に表示される無呼吸低呼吸指数が何を指すのかは不明です。
無呼吸低呼吸指数は、睡眠医療の常識ではAHIを指しますが、簡易検査ではREIしか測っていないからです。
RERA(呼吸努力関連覚醒反応)は、2呼吸分以上の無呼吸、低呼吸の基準を満たさず、1)呼吸努力の増加、2)鼻圧波形で吸気部の平坦化、3)いびき、4)呼気終末二酸化炭素濃度のイベント前の上昇の4つのうちのどれかがあり、睡眠から覚醒反応を生じた場合を1イベントとするので、やはり、「鼻呼吸センサー又は末梢動脈波センサー、気道音センサー及びPLETHセンサー」だけでは、測定に限界があります。
C107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2
【通知】
在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2の対象となる患者は、以下の(イ)から(ハ)までの全ての基準に該当する患者。ただし、無呼吸低呼吸指数(本コラムでは「AHI」と表記)が30以上である患者については、(ロ)の要件を満たせば対象患者となる。
(イ) 無呼吸低呼吸指数(1時間当たりの無呼吸数及び低呼吸数をいう。)が15以上
(ロ) 日中の傾眠、起床時の頭痛などの自覚症状が強く、日常生活に支障を来している症例
(ハ) 睡眠ポリグラフィー上、頻回の睡眠時無呼吸が原因で、睡眠の分断化、深睡眠が著しく減少又は欠如し、持続陽圧呼吸療法により睡眠ポリグラフィー上、睡眠の分断が消失、深睡眠が出現し、睡眠段階が正常化する症例在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料については、当該治療の開始後最長2か月間の治療状況を評価し、当該療法の継続が可能であると認められる症例についてのみ、引き続き算定の対象とする。
保険医療機関が在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料を算定する場合には、持続陽圧呼吸療法装置は当該保険医療機関が患者に貸与する。
以下の(イ)から(ハ)までの全ての基準に該当する患者であって、CPAP療法を実施している睡眠時無呼吸症候群の診断が得られている入院中の患者以外の患者については、使用時間等の着用状況、無呼吸低呼吸指数等がモニタリング可能な機器を活用した上で、当該指導管理を実施する月の前月から数えて3月の間、すべての月で1月当たりの1日平均使用時間が1時間未満である場合には、当該指導管理料を算定しないこと。なお、この場合であっても、在宅療養指導管理材料加算は算定できる。
(2026年6月追加は太字)
【解釈】
この通知こそ、「簡易検査でAHI40以上」の根拠とされてきた部分ですが、今後は簡易検査のREIが30以上で算定できます。
D237の簡易検査(携帯型装置)の解釈で触れたとおり、簡易検査結果は過小評価されることが多いにもかかわらず、簡易検査でAHI30以上、フルPSGでAHI15以上の基準になっているのは、(ハ)として記される、治療前の睡眠の分断化や深睡眠の減少、及び治療後の睡眠の分断の消失や深睡眠の出現等の睡眠段階の正常化の確認が、簡易検査ではできないからです。反対に、簡易検査として認可されている機器であっても、睡眠段階の検証ができるものならば、治療前の睡眠段階の乱れ及び治療後の睡眠段階の正常化を確認できるため、管理料の適用に該当すると考えます。
その場合、前項でも述べたが、治療開始から2か月以内に、睡眠段階を評価できる方法で、効果判定検査を行わなければなりません。
しかし、「当該療法の継続が可能であると認められる症例についてのみ、引き続き算定の対象とする」の「引き続き」という部分に注目すると、2か月以内であって、効果判定検査結果が出る前の最高2回は算定できると解釈できます。
患者が個人で購入したCPAPに対しては、当該管理料は適用できないのは当然ですね。
当該管理料の算定には、都度、膨大なコメントを要し、一言でも足りなければ、切られます。
私見として、医師に診断根拠を算定時に明記させるのは、医師の独立性の侵害であると考えます。
ときどき理不尽な査定に疑義を呈しても、窓口で対応してくださるのは事務方なので、泣き寝入りせざるを得ません。
権限のある方が、このブログに正々堂々、異議申し立てしてくださることを、心よりお待ち申し上げております。