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最高のパフォーマンスは睡眠から生まれる

石田陽子 Yoko Ishida

【悩んだら、逃げていい】


新しい年が始まりました。

2015年に本郷に移って心陽クリニックを開業したので、10周年の年でもあります。

本年は睡眠対応ストレスチェックや睡眠健診、睡眠セミナーによる睡眠健康経営にますます力を入れてまいります。

2月には書籍「Dr. YOKOの睡眠マネジメント ~眠るほど、ぐんぐん仕事がうまくいく」を発売します。


【人と組織の成長を応援する[ノビテクマガジン]】の[特別企画:心のチューニング]というテーマで、睡眠の専門家として、取材していただきました。購入もできますが、ノビテクマガジン倶楽部の無料会員登録で読めるようです。


尊敬する和田先生が表紙の、こんなにかっこいい雑誌に掲載してもらえて、新年早々、非常に幸せです。

私の扉ページには、「最高のパフォーマンスは睡眠から生まれる」と、これまた私の伝えたいことズバリのキャッチコピーを添えていただき、喜びひとしおです。

しかもプロのカメラマンに撮っていただいたので、額縁に入れて飾りたいくらいです(笑)

私の記事を紹介したいのですが、巻頭の和田先生のインタビューが素晴らしいので、まずは皆様、こちらを読んでくださいませ。


和田先生の言葉の中で、この【悩んだら、逃げていい】を、私は新年最初の皆さまへのメッセージにしたいです。2024年は、この言葉をたくさん伝えました。この言葉を伝える機会が増えたのは、悩む人が増えたからではなく、私が仕事を通して、逃げたほうがよい悩んでいる人に対する視力が上がったからだと思います。


私は企業に対しては、「やめる理由」を減らすのではなく、「はたらく理由」を無限に増やすよう指導しています。悩みの種ではなく、ワーク・エンゲージメントの種を探しなさい、と。

多くの企業は、従業員がやめたくなる理由を、事例が起こるたびに、属人的に、場当たり的に、もぐらたたきのようにやっつけようとします。しかし、もぐら退治がうまくいかないと放棄し、「さわるな危険」とか[故障中]などのラベルで[くさいものにふた]してしまいます。

たとえ「やめる理由」があっても、「はたらく理由」があれば、従業員が自らの力で、もぐらの新たな活用方法を見出してくれるものです。もぐら隠しに夢中になっている管理職の背中は、あまりクールではありません。もぐらではなく、部下に目を向けてください。


一方、従業員には、「はたらく理由」があっても、働きたくない気持ちが一抹でもあれば、すぐ「逃げろ」と伝えています。「逃げる」のは「やめる」のではなく、ただ「はたらくのを、一時停止する」だけ、要は「休む」だけです。

それは従業員のためでもありますが、なにより企業のためで、「はたらきたい気持ち100%」の従業員が、最も生産性が高いからです。

私はプロなので、一刻も早く逃げたほうがいい状態だと一目でわかりますが、多くの場合、本人も企業も、そのすごくわかりやすい危険信号に気づかず、働き続けてしまいます。残念ながら、この状態でも、働き続けられちゃえるんです。

働きたくない気持ち、働くことに懐疑的な気持ちがあっても、意外に誰にもバレないし、評価も下がりません。明らかに自分のパフォーマンスは下がっているのに、それに気づいてもらえない状態は、どんどん働く意欲を奪い、どんどん思考能力を奪い、どんどん難しいことが考えられなくなり、意味もなく、涙が出てきます。

「動画を観る」とか、「電車に乗る」とか、今まで気に留めることすらなく流してこなしてきたことも億劫になるのに、「助けを求める」とか、「休む」とか、「受診する」とか、バリバリ元気なときであっても、相当なエネルギーのいる特別な行動なんて、とてもできなくなります。

それでも、そのまま何ヶ月か経つと、前より涙が出なくなり、惰性で勤務することに慣れ、いろいろと感じなくなって、以前ほど辛くなくなることも多いです。そんなふうになんとなく乗り越えてしまうパターンはけっこう多いのですが、実は何も解決していません。


和田先生のおっしゃるとおり、【多くの人は、なんとかその場に対応しなくてはいけないと考え、視野が狭くなり、そこから離れればいいという発想ができなくなってい】きます。このとき受診してくれれば、和田先生も私も医者なら全員、逃げたほうがいいから、一旦休もうという診断書を出します。

もし、ほんの少しでも思い当たる方はぜひ、受診してみてください。


とにかくたくさん寝ること


最初に、このお話をいただいたとき、私はバカ正直に「睡眠は心のチューニング」という高次なテクニックではなく、もっと原始的な生命活動ですが、大丈夫ですか?と尋ねてしまいました(笑)

「昼寝は心のチューニングになりますよね?」と期待たっぷりにいただいたご質問にも、「昼寝はお勧めしていません」とけんもほろろに杓子定規な回答をしたのに、さすがプロの編集者とライターによって、すばらしい記事に仕上げていただきました。


「心のチューニング」という表現を、私は使ったことがなかったのですが、確かにチューニングの本来の意味である楽器の調律やラジオの周波数の調整などを怠ると、本来は美しい音楽が不協和音や雑音になってディストレスの原因になりかねませんね。しかも、ラジオの周波数を合わせるのは、そんなに難しくありません。その点でも、おもしろい表現かもしれません。


和田先生が巻頭の記事で、【人生100年時代を生き延びるには、いかに苦労するかではなく、いかに楽に生き続けるかを考えたほうがいい】とおっしゃっています。標準生理を知っている医者の私には、しごく当たり前の内容です。もともと生命体は、苦労をする本能は持たず、楽して生きるためにプログラムされています。

環境の変化に楽に適応できるならすればいいし、適応できないなら環境を変えればいいんです。進化の過程で適応できなかった環境に適応できるようになることもありますが、何代もかかります。できないことはできなくていい、できることはきっとあります。

つまり、進化の過程でも失われず存続している本能のプログラムが最も楽な生き方なので、私たちがなにか自分のためにわざわざチューニングをしようと考えるときは、できるだけ本能のプログラムを書き換えないほうがいいのです。

ラジオの周波数の正解を知らなくてもチューニングはできます。生まれて初めて聴くのに、どれが雑音混じりで、どれがドンピシャかわかります。

なにか特別なスキルやテクニックがなくても本能でできるのが、真のチューニングです。


いやいや働かない、気が進まなかったら仕事を休む、というのも、非常に本能的で素晴らしい行為です。

もちろん中には、健康には有意義だけど本能には組み込まれていない「受診」や「節制」などもありますが、まあまあ、そういうものは後回しにして、基本的には本能をいいわけに好きなことをするのがベストです。


その点で睡眠はまさに本能に組み込まれた本質的な生命活動で、そのプログラムは非常にシンプルですから、そのマネジマントは、そんなに難しくありません。睡眠マネジメントについて詳しくはぜひ、2月に発売予定の「Dr. YOKOの睡眠マネジメント~眠るほど、ぐんぐん仕事がうまくいく~」を読んでください。


睡眠の基本は眠くなったら眠ることです。

ただただシンプルに眠くなったら眠ることを繰り返していると、体内時計は私たちに規則正しい睡眠と覚醒を与えます。

とはいえ、現代社会に生きる私たちは体内時計ではなく社会の時計に従っていて、眠くなっても眠れない場面が多いものです。


制限がある中でも、睡眠の便益を最大限享受するためには、「1日1回」、「とにかくたくさん寝ること」です。「寝る」というのは「横になる」という意味です。とにかくたくさん何かをしようと思うと、スキマ時間に詰め込むのが効率がよいのですが、残念ながら睡眠は「1日1回」の原則も重要で、結果、連続してとにかくたくさん横になることが大事です。


皆さんは分単位で仕事を詰めていますから、横になっているのに15分も眠れないとイライラして一度ベッドから出て、メールチェックを始めるかもしれません。

しかし、実はチューニングされた健康的な睡眠は、横になってから15分くらいかけて、やってきます。

横になってから眠るまでの時間を睡眠潜時といい、睡眠潜時は標準15分ですが、この私の色気のない説明をライターの方が、こんなに美しい日本語にしてくれました。


【睡眠潜時は、脳の活動をゆっくりと和らげていくために大切な時間です。】


今後は私も、この表現を用います(笑)


[昼寝は睡眠ではなく、心のチューニング]


そして、同じ文脈で雑誌のテーマの心のチューニングにつなげてくださったのも見事でした。

私が昼寝を勧めない理由は、本能にとって楽な睡眠が維持できていれば、昼寝は不要だからです。

当院の睡眠外来の患者にも昼寝は勧めませんが、当然、睡眠課題を持って受診される方々なので、初診時、昼寝の習慣があることも多いです。

もちろん、現在は理由があって昼寝をしているのですから、昼寝を禁止することはありませんが、睡眠障害の治療をすれば、将来的には、昼寝をしないで済むようになりますよ、とお伝えしています。

一方、昼間に15分程度、目を閉じて横になっても、リラックスはするけれど眠ってしまうことはないのは非常に健康な状態です。

そして、昼間に15分程度、リラックスして、実際に睡眠潜時のように脳の活動を和らげるのは、心のチューニングとして、大きな効果があるでしょう。


ただし、昼寝のつもりで目を閉じると最後、目覚ましをかけなければ問題になるほど眠ってしまう場合は、間違いなく睡眠不足です。もちろん今日は昼寝をしてもかまいませんが、昼寝をしないで済む状態のほうが、覚醒している間のパフォーマンスも高いので、どこかで睡眠負債を返済し、睡眠不足のない状態に復活しましょう。


これから6日の月曜日まで、まだまだお正月休みの方も多いでしょう。

ぜひ、休み明けから、最高のパフォーマンスを発揮できるように、今夜から5日連続で、8時間以上臥床してください。もし、眠れるようなら、10時間でも11時間でも大丈夫です。

お休み中に昨年までの睡眠負債を完済し、生まれ変わったようにクリーンな頭で実力を発揮しましょう!!!


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