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漫画はとにかくすばらしい

「睡眠はコントロールできる」遠藤拓郎/江川達也(メディアファクトリー新書)


書評です。

「漫画」が一番伝える力が強いので、現在、心陽でも、漫画推しの友人研究者、竹林正樹先生と協力しながら、準備を進めております。本書は、その参考に手に取りました。

睡眠の情報を魅力的に伝えるためには、第一に皆さんの毎日の生活力、そして患者力が上がるものにしたいと思っています。こんな情報をこんな漫画で読みたいというご意見を、絶賛募集中です。


さて、セミナー受講者、産業医面談者、スリープDXプログラム受講者、そして患者は、口を揃えて「物の本には、ほにゃららら」と言います。まあ、私がそれは科学的に、あるいは生物学的に、あるいは社会的に合っているか合っていないか、好みが重要な因子なので好きか嫌いで決めればいいとか、はっきりジャッジ(?)してくれるから、叱られるとわかっていて、いろいろな情報を教えてくれるものでもありますが、たいてい、「物の本より私のほうがガチで勉強してるので信じなさい」とまず一蹴します。まあ、彼らは何も悪くないんです、物の本を鵜呑みに信じていないからこそ、私に振ってる点では、私のほうを信じてくれているのでしょう。

そして、運のよい彼らはそれを私に伝えて、嘘だと知る機会に恵まれているけれど、その機会のない人が圧倒的に多いことを思うと、つくづく、物の本に嘘八百書くのはやめてほしいな~と思います。まあ、一度でも私と話したら、私に相談するのがベストだと気付くはずですよ!なんちゃって。


イントロダクションには、【睡眠は】【「意志」ではコントロールできない】が、【正しい知識をもち、自分の体や心の状態を理解することで、睡眠の質を上げることはできます】とあります。 「睡眠はコントロールできる」というタイトルですが、「意志」ではコントロールできないと8行目で結論を出しています。

「できないんかい!?」とツッコミたくなります。

コントロールというのは、産業保健や医療の分野でもよく使いますが、ちょうどよい具合に調節するというような意味で、それが少し厳しい感じになると制御とか統制とか管理とかになりますし、もっと軽いニュアンスでも用います。

睡眠のシンプルな定義が意識の消失ですから、コントロールなんてできるわけないんです。覚醒中の行動なら誰でもコントロールできますし、脳の電気活動も修行や訓練でバイオフィードバックできます。それが、マインドフルネスやメディテーションですね。


このあと、この流れで17行目では、【つまり、睡眠をコントロールする=睡眠の質をよくする、ということです】と目立つように断言しており、私などはこの時点で「突然の定義変更」にかなり道に迷いますが、多くの読者は納得して進むのでしょうか?


さて、気を取り直してこの本は、精神科出身の遠藤先生が【これまで診てきた数千人の患者さんの「睡眠の悩み」を分析し、そこから8つの症状を取り上げて解説して】いるそうなのですが、まあ、やっぱり皆さんは、疾患各論が好きですよね。


厚労省の管理職研修動画にも「うつ病とは」なんて項目が出てくるくらいですが、管理職がうつ病の各論を学べば適切な組織環境を形成できるなんてエビデンスはあるはずもないのです。「うつ病」について学んでいる暇があったら、部下の顔を見回して、一言ずつ声をかけて回ってください。


ほとんどの人が睡眠の課題を抱えているが、受診する人はまれ


そして、この8つの症状に悩む相談者の診察内の姿を、江川達也先生が漫画で描いてくれてるんです、これは楽しいです。江川さんの手になるキャラクターが気になる症状を診察室で伝える「相談編」は、ともかく一気に読めますが、すぐに字ばかりの「解決編」になってしまい、同じプロ目線で見ると頓珍漢なことばかり書いてあるので、私はほとんど読み飛ばしてしまいました。

最後の対談も、いまいち、江川先生と噛み合ってない・・・なんとも不思議な一冊でしたが、江川先生が好きなら、手に入れる価値アリです(当院にもあります)。久々に水野遥チャンに会えますよ!


一番不思議なのは、表紙が江川先生じゃないってことですね。



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