コラム
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睡眠リテラシー第4回 Objective Summaryの見方
Objective Summaryを作成するための終夜睡眠ポリグラフィー検査には、イスラエルのItamar社が開発した携帯型検査機器、ウォッチパット ユニファイドを使用します。日本ではフィリップス社が扱っています。PATテクノロジー(Peripheral Artery Tonometry Technology)が、交感神経活性に伴う末梢動脈収縮により変化する血流量を連続的にセンシングして、鼻カニュラ型気流計や複数の脳波電極を用いずに、独自のアルゴリズムで呼吸イベントやレム睡眠、ノンレム睡眠の深度などを検出します。検査中の睡眠と覚醒を明確に区別することで、従来の携帯型検査機器に比べて、AHIやRDI、ODIの算出に分母として必要な「総睡眠時間」を正確に記録できます。そのため、入院して行う通称フルPSG、多点感圧センサーを有する睡眠評価装置を用いた終夜睡眠ポリグラフィー検査と比較して、RDIにおけるPearsonの積率相関係数は0.91(p≦0.001、95 % CI:0.85~0.95)、RDI=10 を用いた場合の感度90.9 %、特異度61.9 %、PPV(陽性的中率)78.9 %、

睡眠リテラシー第3回 女性のライフコースと睡眠
【日本の女性は、男性より睡眠が短い】先日のコラムでは、日本には文化的・社会的背景として、労働状況にかかわらず、家庭での役割負担が大きい女性が睡眠時間を削るという傾向があり、日本は諸外国に比べ、社会参加項目と同様に、睡眠におけるジェンダーギャップが大きいことを伝えました。OECDの調査では、全体の睡眠時間(442分)が例年最下位の日本ですが、同調査で、女性の睡眠時間(435分)が男性(448分)よりも短いのは33ヶ国中5ヶ国のみ、総務省統計局労働力人口統計室の調査によると、OECD加盟国中10ヶ国における有職者女性の睡眠時間が男性よりも短いのは日本のみでした。【睡眠には性差がある】睡眠に性差はあるか、という大きな問いへの回答は「YES」です。生物学的に異なる生理や解剖があるので、あらゆる生命活動に性差は出ます。たとえば、女性は男性に対して不眠症は1.1倍弱、レストレスレッグス症候群は1.4倍、悪夢の経験は2倍多く、男性は女性に対してレム睡眠行動障害が4倍以上、男性の睡眠呼吸障害は閉経前女性の15.8倍、閉経後女性の2.5倍多いことなどがわかっています。一方、コラムでも取り上げてきている加

医療機関・企業間の診療情報の取扱
医療機関と企業の治療と就業の両立支援のための連携、特に診療情報の取り扱いについて、まとめておきます。私は、治療と就業、どちらを支援する文脈においても、企業と医療機関が連携するべきタイミングは「少ない」と考えています。企業および医療機関は、それぞれ従業員・患者本人とは、非常に強い契約関係にあり、本人のBPSヘルスに多大なる影響を持ちますが、その契約は独立しています。しかし、治療のためにも、就業のためにも、企業と医療機関が連携するべきタイミングは、確実に存在します。そのタイミングはいつか、そのタイミングにはどうふるまえばいいのか、を考察しましょう。診療情報の主たる持ち主は患者本人ですが、その上に情報の非対称性があることから、本人の同意を得て、本人の家族や勤務先等に、本人の求める範囲内で診療情報を提供する場合があります。これは、本人の情報の非対称性を助けるために、いわば通訳として、医師が本人の治療や生活に密接にかかわる人々に診療情報を説明するという意味合いです。実は、医師はその教育の過程で、診療報酬制度や診療情報の提供の是非について、体系的に学ぶわけではなく、多くの場合、実務や判例を通じて経

ジェンダーギャップ・レポート 2022
世界経済フォーラムは7月13日、「ジェンダーギャップ指数2022」を発表しました。調査対象の146カ国のうち、日本はG7とアジア・太平洋地域のうち最下位の116位でした。ジェンダーとは、生物学的な性別ではなく、社会的・文化的につくられた概念を表すため、社会や文化に強く紐付く国ごとの差異を評価する意味があります。経済(Economic Participation and Opportunity)、教育(Educational Attainment)、医療へのアクセス(Health and Survival)、政治参加(Political Empowerment)という4分野で、男性を100として、女性の現実を%表示してスコアを算出します。日本の女性は男性に比べ、65%しか活躍できていないという結果になりました。トップのアイスランドは90.8%、トップは100%を超えると思っていたので、むしろ意外でした。分野別に日本の結果を見てみると、教育や医療へのアクセスが充分に高い一方で、管理職や政治家の数に格差が大きいです。とはいえ、教育や医療は全体で見たときのばらつき自体が少ないということも注目し

ボケたくないなら眠りなさい④ インプットの保存
このところ、衝撃的な音や映像が繰り返し報道されています。インプットしたくなくても、勝手に入ってきます。イレギュラーな刺激は人の心身に良くない影響を与えます。心身社会的なBPSヘルスにおいて、この「イレギュラー」は一つのキーワードで、事故や事件、不調の背景には必ず、イレギュラーななにかが含まれています。健康管理も安全管理も組織管理も、私はイレギュラーに注目して進めます。「ホームズとレイのストレス尺度」では、「昇進」や「結婚」、「クリスマス」など、すごく待ち遠しくてワクワクするようなイレギュラーなイベントが、心身にストレスを与えると分類されています。ましてや、誰かが傷ついたり苦しんだりするという、心理的負担かつイレギュラーなインプットは、大きなストレスです。見知らぬ国の戦争や災害の映像でもつらいですが、知っている場所や知っている人だと、更にきついですね。現代社会は情報にアクセスすることより、距離を置くほうが難しいので、知りたくないこと、忘れたいことをインプットしてしまう機会が多いです。もちろん、生きていると、一生忘れたくないこと、ずっと大切にしたいこと、仕事や学業の上で、あえて覚えておかな

睡眠リテラシー第2回 レム睡眠とノンレム睡眠、浅い睡眠と深い睡眠
ノンレム睡眠には深さという尺度がありますが、レム睡眠とノンレム睡眠の違いは深さではなく、その性質の違いと理解したほうが、わかりやすいです。各睡眠の個性を知れば、なぜ異なる睡眠があるのかが、見えてきます。

睡眠リテラシー第1回 加齢とともに睡眠は変化する
このシリーズは、Sleep DX Programに参加してくださっている方向けのコンテンツですが、正しい睡眠知識は人類共通なので、どなたでも参考にしてください。 【加齢とともに睡眠時間は減っていく】 ぜひ、こちらのコラムをご覧ください。「ボケたくないなら眠りなさい①睡眠時間と年齢」「最近、トシのせいか、朝早く起きちゃうんですよ」 産業医として労働者と面談していると、そんな台詞をよく聞きます。 診察でも面談でも年齢は分かっているので、 「年齢に応じて、10年で30分ずつくらい、必要な睡眠時間は短くなりますが、45歳で毎日5時間の睡眠は短すぎますね」と申し上げることが多いです。 人間の本質的な生命活動に関わる数値は、正規分布や対数正規分布に類似することが多いですが、人間にプログラムされた本能的な睡眠時間はかなりばらつきは少ないです。私を例に取ると50歳の女性の本能的な睡眠時間の分布は図のような感じと推定されます。5時間の人は10時間眠らなければいけない人と同じくらい存在するものの、全体の0.2%もいないでしょう。私の印象として、労働者が自覚的に思いこんでいる「適切な睡眠時間」の山は、か

多様化する社会の情報の非対称性
人間同士のコミュニケーションにおいて、お互いの手持ちの情報が対象であることは「ありえない」と言い切ってよいのですが、多様化する社会に生きる私たちは、情報の非対称性による課題をどう乗り越えていけばよいのでしょうか。私は情報の非対称性を無限の可能性と捉え、そのリスクではなくベネフィットを享受する戦略に注目しています。さて、ウィキペディアによると、アメリカの理論経済学者ケネス・アローが、1963年に、アメリカの経済学会誌「アメリカン・エコノミック・レビュー」に、「Uncertainty and the Welfare Economics of Medical Care(医療の不確実性と厚生経済学)」という論文を発表し、「医者と患者との間にある情報の非対称性が、医療保険の効率的運用を阻害するという現象」を最初に指摘したそうです。「information asymmetry」という用語は、アメリカの理論経済学者ジョージ・アカロフが、1970年に、「The Market for Lemons: Quality Uncertainty and the Market Mechanism」という論文で最

第47回日本睡眠学会
6月30日、7月1日、第47回日本睡眠学会に参加してきました。 多くの先生方と現地で再会でき、最新情報をアップデートすることができて、非常に有意義でした。 睡眠学会に参加するようになってから、ずっと挨拶できずにいた、大学時代の恩師、本間先生と、現在所属する久留米大学学長の内村先生とお話できたのが、一番印象的でした。 今後、歯科向けサービスを展開しようと思っているので、歯科の先生方とつながれたのも大収穫です。産業医系の学会と比較すると、やはりガチな臨床学会は楽しいな、とあらためて思いました。私の発表は、皆さんにご協力をいただいたフォーカスグループインタビュー、3名の先生にご質問をいただきました。ポスターはこちらです。

法令と社会規範のあいだにある、ローカルルールの大切さ
先日、法令や規則遵守の徹底をめざす、クライアント企業の安全大会で、話した内容のメモです。法令を守って、生産性高く働くために、企業内の規定をどう使うのか、というテーマです。 社会規範の範囲は広く多様で、社会規範のうち、法令に定められる部分はごくごくわずかです。とはいえ、人権を尊重しながら、多様な場面で具体的な行動を規定するための法令の文言は非常に複雑で、業務に関連するすべての法令を覚えるなんて、とうてい無理です。 ✓ 時間外労働が年720時間以内✓ 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満✓ 時間外労働と休日労働の合計について、2~6ヵ月それぞれの平均がすべて1ヵ月あたり80時間以内✓ 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヵ月まで以上は時間外労働の規定ですが、年の制限、月の制限、平均の制限、回数の制限と、頭がこんがらがります。たとえば、社内の規定で、時間外労働を毎月45時間以内におさめると成文化しておけば、少なくとも社内規定を守っている労働者が上流の法令を破るリスクはありません。たとえ社内規定を破ってしまっても、そこから個別対応していけば、充分に上流の法令を守るこ
