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治療者割合を増やすことを目的とする運輸会社におけるトラックドライバー向けSAS健診プログラムの紹介

Yoko

2024年10月3日

第34回産業衛生学会全国協議会で発表します

第34回産業衛生学会全国協議会で、「治療者割合を増やすことを目的とする運輸会社におけるトラックドライバー向けSAS健診プログラムの紹介」を発表します。


【背景】30~69歳の働きざかりの日本人のうち、睡眠時無呼吸症候群(以下、SAS)患者は、2200万人以上と推定されており、医科治療、歯科治療ともに社会保険制度が充実しているが、現在、治療中の患者数は70万人程度である。未治療のSASは心身社会的な健康のリスクを高めるが、治療反応性はよく、治療により、リスクを非SAS患者と同等に下げられる。事業者は、より多くのSAS患者に治療を提供するため、診断のための検査件数を増やし、治療行動を支援する努力が求められる。


【目的】国土交通省は運転手のSASスクリーニングを運輸会社の努力義務に定める。スクリーニングでハイリスク群を抽出し、受診勧奨を行い、治療を導入する各過程で脱落者が出るため、治療開始者はスクリーニング受検者の2.4%という報告もある。現在、運輸会社A社において、より多くのSAS患者を治療につなげる取り組みを行っているので紹介する。


【過去実績検証】A社では2021年4月から2024年3月の3年間で約3000名のトラック運転手を対象に終夜酸素飽和度検査によるスクリーニングを実施した。そのうち、2021年6月から2021年12月22日に933名がスクリーニングを実施し、41名(4.4%)がデータ不良、DおよびD+判定の374名(37.2%)に精密検査を勧奨し、163名(17.5%)が受診し、95名(10.2%)が治療を開始した。事業者はスクリーニング費用と精密検査費用を負担し、1名を治療につなげるための費用は、102,656.5円であった。


【方法】2023年4月から2026年3月の3年間で約3000名のA社のトラック運転手を対象に、携帯型終夜睡眠ポリグラフィーにより診断基準となるAHIを測定し、AHI20(回/時)以上の場合、医師による結果説明と睡眠指導、受診勧奨を行う。


【実績検証】2024年4月から6月までにAHIを測定した85名について観察し、施策設計の妥当性を検証した。データ不良はなく、AHI20以上は15名(17.6%)で、過去実績と同程度のハイリスク者(32名、37.2%)を抽出するためには、AHIの基準を10.7に引き下げる必要があった。13名に保健指導を行い、9名にCPAP対応医科紹介、1名にOA対応歯科紹介、2名が再検査(保険使用自己負担)の結果AHI20未満、1名が治療拒否であった。過去実績では受診勧奨群の43.6%が精密検査を実施し、27.4%が治療導入したが、今回は1名を除く93.3%が医療機関を受診した。ここまで、1名を治療につなげるための費用は、68,566.7円であった。


【考察】SAS治療者数を増やすという目的でSAS健診プログラムを施行している。同時に睡眠時間を増やすこと、具体的には6時間未満の睡眠時間の場合、毎朝の点呼で睡眠時間が十分だと申告しないよう指導している。会社が医師による指導を行うことで従業員に本気が伝わり、治療行動への移行が円滑になっている。今後は介入群の基準値の引き下げ等、具体的な運用方法について、洗練させていきたい。



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