株式会社心陽
最終更新: 2026/8/15患者力

AIに期待する、患者と医療をつなぐ力

2026年8月13日、JAMAの論考。

From Breakthrough to Follow-Through—A Public Health Agenda for AI
Beckman & Chokshi, JAMA, Aug 13, 2026


まさに現在の私の最大のモヤモヤ、
医学的に有効な介入が存在するのに、
それを必要とする人とのマッチングが適切なタイミングで行われない
breakthrough → follow-through のギャップ
という社会課題。

そこでAIを、診断や置換ではなく、
対象者の発見、アウトリーチ、patient navigation、
そして継続的な人間関係を支えるものとして位置づけている。

Ms.Lの例

特に面白いのが、43歳のベトナム語を話す女性を例に、
AIが未受診を発見
→ 本人に説明
→ 検査を手配
→ 交通手段まで調整
→ その後のフォロー漏れを再発見、
という一連の流れを描いている点。

AIが医療行為をするのではなく、
人間が持っている有効な介入まで連れていく設計になっている。

先日北海道医療AIビジネスプランコンテストで、
CHCP賞とエア・ウォーター賞の2冠をいただけた、
aiBONDの思想とかなり近い。

とりわけ
「AIを longitudinal human relationships を支える方向に使う」
という論旨は、
AIが人を選別するのではなく、関係を継続し、
人への相談・受診・行動につなげるという、ほぼ同じ設計思想を扱っている。

医学や科学の進歩は予防できる疾病、治療できる疾病を増やし続けている。
それに人々をどうアクセスさせるかが重要事項だが、
コラム「睡眠のモヤモヤがあるのなら、睡眠障害診療科を受診しよう!」で触れたとおり、
多くの人々にとって、「健康上のモヤモヤ」と「医療機関受診」の距離があまりに遠い。

「医療機関受診」は、まだまだ「ビョーキの人の特別な行動」と思われている。

そういうハードルをなくして、経済的にも、地理的にも、
平等な医療を受けられるしくみが「国民皆保険制度」だが、
「医療機関を受診したほうがいい」とアドバイスすると、ギョッとされてしまう。

「いや、ちょっとモヤモヤしてるだけで、ビョーキじゃないんでダイジョブっす」
と拒絶する人々に、
「ちょっとモヤモヤしてるだけで、ビョーイン行ってダイジョブっす」
というNORMをいかに浸透させるか。

ビジネスプランコンテストのあと、
「令和の時代って、具合悪いだけで受診してなかったんだって、ダサくない?」
っていう未来が来ればいいよね、と話した。

受診という選択肢をナウくするには?

あらゆる健康課題による経済損失のうち、医療費が占めるのは25%、
医療費の3倍の75%が生産性損失、
生産性損失の85%以上が、
出勤しているのに、健康上のモヤモヤのせいでパフォーマンスが出ない
ことによるコスト=プレゼンティーイズム(上図の黄色の部分)で、
欠勤や休職により会社にいない
ことによるコスト=アブセンティーイズムの約6倍だ。

プレゼンティーイズムの多くは医療によって削減可能だ。
しかし、生産性文脈で企業が従業員に医療機関受診を
推奨するという単純なNORMは、
健康経営優良法人認定制度の銘柄企業にも浸透していない。

健康診断後の二次受診勧奨は、
非医療職である実務担当者に任されるが、
勧奨している担当者自身が受診意義を認識していないどころか、
やはり多くの人同様、ビョーインに行くほどヤバくない、という感覚なので、
他の社員から邪険にされても、むしろ、そりゃそーだな、と思ってしまう。

このあと、ヘルシーカンパニーのコラムを書くつもりだが、
健康経営のはじめの一歩は実務担当者の人権を守り、
彼らの心理社会的なウェルビーイングを保証することだ。

受診勧奨業務を担当するには、どの医療従事者より
科学的エビデンス、臨床ガイドライン、実臨床、医療制度に通じ、
どの公衆衛生家より、人事担当者より、
社内外の治療と仕事の両立支援制度に通じ、
相手からどんな表現で説明を求められても動じず、
しつこく根気よく同じ勧奨を同じ温度で継続し、
初診につないで終わりではなく、
診療継続支援まで伴走し続けられる資質が必要で、
そんな人間はいない。

だけどAIにとっては朝飯前。

AIの価値は、人の代わりになることではなく、
人が持つ解決策へ届くまで関係を切らずに支えられることだ。

JAMAが公衆衛生側から、aiBONDとほぼ同じ論考を出した偶然が、面白い。

先日のピッチの私の締めの言葉。

aiBONDは人間の仕事を代替しない。

aiBONDはただつなぐだけ。

受診するのも人間、
診療するのも人間、
モヤモヤを解決し、生産するのも人間。


aiBONDはただつなぐだけ。

そして人間は、つながるほどに強くなる。

この記事をシェアする