ヘルシーカンパニーから30年 健康経営のはじまりを知っていますか?
Accelerating Workforce Well-Being—Lessons From Safety
Liselotte
N. Dyrbye, Helen Burstin 2026年4月27日(私の53歳の誕生日)
はじまりの前に、昨日(2026年8月13日)、
Comment & Responseの出た、こちらの論文を紹介。
workforce well-beingを「福利厚生」ではなく、
quality / safety / access / financial performance / governance に
結びついた組織のoperational imperativeとして扱っている。
測定についても、何でも測る “measurement megalomania” を戒め、
行動につながる指標だけを測る、
さらに個人対策ではなくwork systemを再設計する、という立場。
昨日のLetterはそこに「intersectionalityの視点が不足している」と指摘し、
Reply側も同意して、
bias、discrimination、belonging、psychological safety、invisible laborまで
組織設計に含めるべきだとしている。
論文の芯は明快で、
burnoutを個人の問題ではなくsystem-level threatとして扱い、
well-beingを「いいことだからやる施策」から、
組織が責任を負う operational imperative に変えろと言っている。
業務設計の改善は「健康施策」ではなく、
患者・職員・組織すべてに効く経営・業務改善そのものだと明言している。
あら、私がいつも言ってることだわ。
well-beingを景気次第で削れる任意施策にしない
経営・ガバナンスレベルの責任事項にする
測定は「測るために測る」のではなく、行動につながるものだけにする
個人を変えるのではなく、work systemを再設計する
cultureはsoftな付加物ではなく、介入そのもの
組織同士で学び、改善を加速する
well-beingの責任をexecutive/board levelに置く
既存のquality improvement infrastructureにwell-beingを組み込む
これがはじまりから30年、令和の健康経営の最前線だけど、
皆様の会社が考えている健康経営の姿と一致していたら嬉しい。
健康経営とは、従業員の人的資本に投資して、
企業が社会的価値を高める経営戦略。
社長が高い浄水器を従業員に施しで買い与えるなんて話ではない。
従業員の健康にお医者さんごっこで寄り添うものでもなく、
従業員が自然に健康になってしまうような
適切な職場の心理社会的環境を会社が醸成すること。
少なくとも健康経営度調査にチェックしながら
担当者が一喜一憂するのは、健康経営ではない。
C-suiteが、旗振りしないとね。
THE HEALTHY COMPANY Dr. Robert H. Rosen

健康経営®という言葉をつくったのは、健康経営研究会の岡田邦夫先生。
健康経営の歴史を生成AIに尋ねてみると、
1990年代に米国で、
ロバート・H・ローゼン先生が、
「ヘルシー・カンパニー思想」を提唱
したことが、きっかけだと答えるでしょう。
Dr. Robert H. Rosen

Robert H. Rosen(ロバート・H・ローゼン)博士は、
臨床心理学の博士号を持つ組織心理学者、経営アドバイザー。
1991年に出版した著書
『The Healthy Company:
Eight Strategies to Develop People, Productivity, and Profits』で、
企業の持続的な成長には、
そこで働く「人」の健康と組織そのものの健全性が不可欠である
という考えを提示。
同年、そのリーダーシップ研究に対してMacArthur Foundationの助成を受けた。
ヘルシーカンパニー
人的資源の活用とストレス管理
Dr. Robert H. Rosen 著
宗像恒次 監訳
産能大学メンタル・マネジメント研究会 訳

私の手元にあるのが平成6年2月20日の初版発行、
現在、健康経営に関心のある方でも、読んでいない方が多いと思います。
お盆特別企画、
宗像先生の名訳を、一緒に振り返りましょう。
本書のガイドライン(監訳者まえがき)
このまえがきがすばらしくて、私にとっては、
健康経営の憲法前文のようなもの。
勤労者の心身の健康と生産性
勤労者の健康は働き方に関わっていて、
生産性向上は、健康管理に関わっている。働き方と健康は不可分である。
従来人の健康は産業保健分野に任され、
経営や組織や人材開発とは関わってこなかった。しかし、会社の業績向上は、
従業員個人のエネルギーが
いかに健康増進的に使われるかどうかにかかっている。個人のエネルギーが健康増進に向いていれば、
ストレスはむしろ、
仕事のモラルや心身の健康増進、
自己成長と業績向上をもたらす。しかし、個人のエネルギーが健康抑制に向くとき、
心身の不調を招き、生産性の低下につながる。
ここ、まだ1ページも進んでないけど、
これが私の健康経営の定義につながります。
従業員の人的資本に投資して、
企業の社会的価値を高める経営戦略。
え?
健康経営って産業保健職がやるんじゃないの?
と思った方、違います。
産業医の岡田先生は、このロジックで、
岡田先生のビジネスである
産業保健の社会的価値を上げたけど、
皆さんは自社の強みを活かした
健康経営をすればいいんです。
いまこそ必要な心身健康への企業アプローチ
ヘルシーカンパニーという概念は、
従来分断されてきた経営管理と健康管理を
統合的に捉えるアプローチである。日本ではむしろ、
従業員の健康を経営と結びつけるのは
タブーとして避けられ、
健康診断でハイリスク者をスクリーニングし、
保健指導していこうというアプローチが一般的であった。不健康なライフスタイルは個人の意志の弱さとされてきたが、
不規則な食生活や運動不足、飲酒習慣は、職場環境の影響を受け、
職場環境をつくり出す経営陣のリーダーシップによるところが大きい。ハイリスク者への保健指導強化は、
失敗に終わる(ライフスタイル変容につながらない)ことが多く、
従業員との生き生きとした意思疎通が失われやすく、
むしろ健康管理担当者が、仕事の満足感がないため、
燃え尽き、無気力、不健康になっていく。
気づきました?
健康経営優良法人認定事業が開始されても、
この問題全然解決されてないし、
むしろ加速してますよね?
健康経営っていうなら、
まず、ヘルシーカンパニー読みましょうよ、
と私は思います。
仕事の満足感が得られない仕事は、
今や、AIに回せばいい。
それがai-Xの新事業、aiBONDです。
空気清浄機や水素水より、
よっぽど健康経営の本質を射てるんですけど
評価されないのは広告費の差でしょうか。
ストレスマネジマントが人的資源開発のポイント
従業員を健康にしたい、
すなわち従業員のエネルギーを健康増進に向けたければ、
ストレスマネジメントのうまい人的資源を開発できる
ような職場環境の醸成が肝要。ストレスマネジメントのうまい人材とは、
要求や期待を適度な目標設定に代え、
またそれを他と適度に役割設定し、
他からのサポートを得ながら、
達成の見通しを確保しながら、
行動を積極的に行い、
その結果をたえずフィードバックしながら進められる、
自己統制力を持つ人材のことである。自己統制力を開発し、尊重する職場環境は、
従業員の健康を増進し、業績を向上し、
形式主義や権威主義を排し、
オープンで率直なコミュニケーションを活発にし、
失敗は自己成長プロセスとして許される。
なぜ、これを健康経営度調査にそのまま使わないのか?
ストレスチェックでは、職場環境を、まさに、
Karasekのデマンドコントロールモデルと
NIOSHのストレスモデルで測定している。
要求が高くても、コントロールが高く、
サポートが得られれば、成長につながる。
失敗の許される経営方針では、
ヒヤリハットの報告が増え、
結局致命的な事故が減ることもわかっている。
もう、全部書いてあるのに、
なぜ、どの企業もこれをやらないのだろうか?
ストレス耐性に強い人材を育てる
ストレスマネジメントのうまい、
自己統制力をもつ人材を採用し、開発すれば、
他人のニーズをとらえ、
現実的な見通しを立てながら問題解決し、
自ら判断し、決定し、実行できる。また仕事が人生のすべてではないので、
職業生活と家庭生活、余暇生活とのバランスや、
退職後の生活を考慮することも大切である。労働意識そのものが大きくかわりつつあるこんにち、
日本企業の経営・管理者は本書から大きな示唆を得る筈である。
これがわずか6ページのまえがきなんですが、
巷の健康経営セミナーを、
千本くらい聞いた価値がありますよね。
WHY?! JAPANESE PEOPLE?!
と言いたい気持ちでいっぱいではないでしょうか?
さて、ここまではまえがき、
本当のヘルシーカンパニーの世界へのご案内は、
皆様の反響次第といたします。