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ABC検診のススメ

更新日:4月17日

バリウムは心身社会的に有害

皆さん、バリウムは人体に有害なので、主治医が診療に必要と判断したとき以外は、飲まないでください。

こちらのコラム、「それでもバリウム飲みますか?」や「バリウムが盲腸の真犯人」も参考にしてください。


バリウムはもちろん、上部消化管内視鏡にしても、ABC検診にしても、胃がん検診は、労働安全衛生法により、会社が従業員に行わなければならない&従業員は受けなければならない健康診断、通称「法定健診」項目ではありません。


会社が胃がん検診を受けさせなければいけない義務も、従業員が胃がん検診を受けなければいけない義務もありません。


では、なぜ、健診機関が当たり前のようにバリウム(胃X線検査)による胃がん検診をセットしてくるのかを説明すると話が長くなってしまいますが、

簡単に言うと、昔の集団検診→成人病健診(老人保健法)の遺残をうまく利用した健診機関の営利目的です。


胃がんの原因はピロリ菌

1984年に、胃がんの原因であるヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が発見され、胃がんは予防できるがんになりました。


バリウム検査は1950年代から行われていて、胃がんの原因がピロリ菌だと知られる前の古い検査です。

図のように、ピロリ菌発見から胃がんの罹患も死亡率もどんどん減っています。


左:生誕年と ピロリ感染率の関係 (文献1~6より作図) 右:年齢調整の罹患率と死亡率(胃がん)
左:生誕年と ピロリ感染率の関係 (文献1~6より作図) 右:年齢調整の罹患率と死亡率(胃がん)

ピロリ菌は、多くの場合、赤ちゃん時代に口から感染します。

家族からの口移しや井戸水など、共同生活の中で保菌者から口、食道を通って胃にピロリ菌がやってきます。

大人になってから感染する可能性は低いので、職場のABC検診は1回だけでよいでしょう。

衛生状態や生活環境の変化によって、図のように年齢が若いほど、保菌率は低いです。


大人になってから感染することは、まずないので、佐賀県では、中学3年を対象に胃がん予防のためピロリ菌の検査・除菌を助成する事業を2014年から継続しています。

佐賀大の垣内俊彦・診療准教授によると、佐賀県内の中学3年生のピロリ菌陽性率は、2016年は3.6%で2024年は1.3%だったそうです。除菌による重い副作用の報告はこれまでありません。


年齢階級別罹患率(2023年)
年齢階級別罹患率(2023年)

では、胃がんはどれくらい減ったのでしょうか?

というのは、11年前の中学3年生はまだ20代なので、減ったかどうかわかりません。


ピロリ菌を除菌すると、胃がんリスクが35~50%程度低下しますが、ピロリ菌に感染したことがない人に比べれば、50倍程度、リスクが高いです。しかし、そのリスクはピロリ菌が胃にいた期間に相関するので、中学3年生という早期に除菌しておくと、ピロリ菌が悪さをする隙がないため、40年後の罹患率低下にはおおいに期待が持てます。


1年に新たに胃がんを発症する患者は、全体で0.08%(2023)ですが、図のようにその8割は65歳以上に集中しており、職場のウェルビーイング施策としての優先順位は高くないことがわかります。

だからこそ、バリウムは飲まない、飲ませないでほしいのです。


ところが、ABC検診なら、法定健診項目をみるときと同じ血液検体で、胃がんのリスクがわかります。 つまり、身体的にも時間的にも従業員に検査追加の負担はかかりません。

また、胃エックス線検査や内視鏡のような食事や飲水の制限も不要です。


ABC検診による胃がんリスク分類

胃がんリスク検診(ABC検診)とは、ピロリ菌IgG抗体による感染推定と胃粘膜萎縮の程度(血清ペプシノゲン値)を測定して、胃がんリスクを測定する方法です。


ピロリ菌がいるかいないか、胃粘膜の萎縮があるかないかで、ABCD(E)の4(5)群に分けます。Eは除菌済み。

Aはピロリも萎縮もなし、Bはピロリはいるけど萎縮はなし、Cはピロリがいて萎縮あり、Dは萎縮のみです。


1年の胃がんの発生率は、A:0、B:約0.1%、C:約0.3%、D:0.5~1%です。


A以外は全体の発症率の0.08%より高いのでビックリしますが、安心してください。

ある企業健診では、それぞれの割合はA:74%、B:16%、C:9%、D:1%でした。

胃がんの原因は、すべてピロリ菌です。

それなのに、どうしてピロリ菌が陰性で萎縮が進んでいるD群のリスクが最も高いのでしょうか。


ピロリ菌は胃に住んでいる間に、胃を痛め続けるので、最初はピロリがいるけど萎縮のなかった胃(B)が、どんどん荒れて萎縮していき(C)、とうとう原因であるピロリすら住めないほどに荒れ果ててしまった環境が、Dなのです。

Dほど荒れ果てるためには、ピロリの活躍が必要なので、過去には、BやCの状態を通り越してきたのです。


胃がんリスク分類による推奨アクション

全体の74%に当たるAの方は、症状がなければ、胃内視鏡検査を受けてもいいけど、受けなくてもいいです。

50歳以上の住人に市町村が健康増進法にしたがって実施する対策型がん検診(住民検診)で受診すれば十分でしょう。

A型でも胃炎症状がある場合、癌化のリスクがある自己免疫性胃炎(AIG:autoimmune gastritis)という病態があります。内視鏡所見やガストリン値の測定などで診断できますので、胃がんリスク分類に関わらず、気になる症状のある方は、すぐに保険医療機関を受診してください。

症状がある場合は、もちろん、保険診療です。


Bの方は除菌と定期的な上部消化管内視鏡を受診してください。

ピロリ菌感染後の除菌と内視鏡は、保険診療で受けられます。


Cの方は除菌と胃炎の治療、そして定期的な上部消化管内視鏡を受診してください。

ピロリ菌感染後の除菌と胃炎の治療と内視鏡は、保険診療で受けられます。


Dの方は、除菌のフェーズを過ぎているので、胃炎の治療と定期的な上部消化管内視鏡の受診が必要です。

胃炎の治療と内視鏡は、保険診療で受けられます。


Eの方は、除菌が済んでいるはずなのでABC検診を受ける必要はないのですが、BやC同様、定期的な上部消化管内視鏡が必要です。

除菌の申告がなければEとは判定されないはずですが、万が一、除菌していないのにEと判定された場合は、Dの可能性もありますので、いずれにせよ、定期的な内視鏡を受診してください。


つまり、会社負担で1回だけABC検診を行えば、必要な従業員は、その後、保険利用3割負担で検査を受けられます。

健診医療機関より、胃専門診療医療機関のほうが医者の技術も高く、その場で生検や治療を追加してくれます。

会社も従業員の社会保険料を半額負担していますので、保険診療による健康管理を推奨することはコスト感覚からも疾病の早期発見早期治療の観点からも有利です。


ABC検診と上部消化管内視鏡、そして胃X線検査(バリウム)の特徴

保険点数は内視鏡が1200点、バリウムが750点程度で、3割負担の保険診療ならば、自己負担額は3600円、2250円程度です。ABC検診は治療ではなくリスクのスクリーニングなので、保険適応はありません。


健診医療機関では内視鏡が13000円、バリウムが8000円、ABC検診が4000円程度です。

内視鏡やバリウムもスクリーニングとして実施するときは、保険適応はありません。

ただし、ABC検診は1度受ければ、その後の保険診療戦略が立てられるという点で、費用面の合理性は最も高いでしょう。


次に精度です。


胃エックス線検査(バリウム)は胃内に存在するバリウムをエックス線で透視して粘膜の性状や胃の形を見る検査です。レントゲンに映るものを胃に貯めて、外から胃の全体像を見て、歪みなどで病変を推定します。確定診断には上部消化管内視鏡が必要です。

上部消化管内視鏡は小さなカメラで粘膜の性状を直接観察する検査です。胃の状態を視覚で直接観察し、画像を残すことができます。内視鏡の場合は見逃し(偽陰性)の理由は主にヒューマンエラーです。(だから専門診療医療機関で行う内視鏡の方が有利です)


一方でABC健診は血液の状態から胃の状態を推測してリスク分類するだけなので、直接見る検査に、単体での精度は劣ります。しかし、その後に内視鏡検査を実施する行動変容につながりやすく、職場での検診後受診勧奨をうまくキャンペーンすれば、最初から内視鏡を選択肢た場合以上のアウトカムが得られることがあります。


というのもたとえばバリウムや内視鏡で「萎縮性胃炎」という所見があっても、多くの従業員はそのあとどうしていいのかわかりません。

これは、「胃がんリスクがとても高い状態」なのですが、健診結果にはそう書いてはくれないんですね。

産業医として健診結果を見ていても、実に多くの人が、毎年内視鏡を選択肢、毎年「萎縮性胃炎」の診断を受けています。


もちろん毎年ABC検診を受けていて、毎年BやCという方も少なくありません。 どんな検査をしても、その後の行動が伴わなければ、意味はありません。

ときどき、Eなのに連続してABC検診を受けている方もいて、どの検査を受けるのか以上に、検査結果後の行動戦略啓発が最も重要な情報だな、と感じます。


先日も、

「健診受けたら健康になるわけじゃないんですよ!」

と伝えたら、大企業の健康管理担当管理職が、

「え?そうなんですか?!」

とたまげてましたけど、皆さん、どうも、健診受けたら健康になる、異常があればきっと医療機関から連絡があって次の行動を教えてくれるはず、と思っているようですけど、違います。


産業医だって何千人もの健診結果を見ているので、あ~あ、萎縮性胃炎放置してるな~~、のわりにタバコ吸ってるな~~、ストレス反応も強いな~~とは思うものの、「通常勤務可」として介入しません。


胃がん撲滅プロジェクトのススメ

もちろん、通常の産業医業務では「通常勤務可」ですが、心陽ではこれまで企業健診において【胃がん撲滅プロジェクト】の実績を上げてきました。


企業によって様々ですが、労働安全衛生法に基づく法廷健診と、健保が行う成人病健診・がん検診を同時に実施している場合がほとんどです。


健保や健診機関に勧められるままに毎年バリウム飲ませている企業が非常に多いのですが、これは無意味です。


ひとつの胃がんを発見するのに必要な金額はざっくり、バリウム(1回8000円)で1,800,000円、内視鏡(1回13000円)で80,000円です。つまり内視鏡は約4倍胃がんが見つけやすく、食道から十二指腸まで、胃以外のがんを見つける機会もあるということですね。


目黒区の検診では、ABC検診は30,027人、胃エックス線検診群は9,611人で、胃がん発見率はそれぞれ0.24対0.06、早期がん率はそれぞれ72.6%、16.7%でした。

10,000人のうち早期胃がんは18人と1人の差、つまり全体で4倍の差を作っているのはほとんど早期胃がんの発見率で、早期胃がん発見率だけで比べれば18倍という効果です。


行政の負担した合計費用(一人あたり費用)は、両者ともほぼ同じで、それぞれ1億2,886万円(4291円)対1億2,599万円(13,109円)です。

一人あたり費用は3分の1未満で、発見率は4倍ですから、単純に計算すれば、ABC群では1人の胃がんをバリウムの12分の1の費用で発見しました。早期胃癌に限れば50倍以上です。


この調査は1回の検診によるものですが、毎年、胃エックス線を実施する場合、毎年、バリウム費用8000円×従業員数の出費があります。

これを単回のABC検診に置き換えると、8000円×のべ(従業員数×就業年数)が4000円×のべ従業員数に節約できます。


職場でABC検診による胃がん撲滅プロジェクトを導入すれば、導入年度は4000円×従業員数が節約でき、来年度以降は、8000円×のべ(従業員数×就業年数)が節約できます。

100人の会社で、新卒から70歳まで45年程度、働く方が多ければ、

8000円×100人×45年=36,000,000円の節約ができます。


この3600万円を、もっと従業員のウェルビーイングが実質的に向上する施策に当てられるのです。


実際には、成人病検診がはじまる40歳からの従業員にバリウムを飲ませている企業も多いと思います。

50歳からは市町村の検診も始まりますので、40歳と言わず、雇入れ時にすぐにABC検診を行うことで、従業員の早期除菌と早期保険診療開始を実現できるのです。


保菌率15%以下の40歳未満の従業員は、幸いなことに、まだバリウムを飲んだことがありません。

毎年飲まなきゃいけないという慣例による思考停止もありませんし、非常に合理的な世代ですから、しっかりと啓発すれば、ABC検診後の正しい行動にも期待が持てます。


ABC検診に切り替えようとすると健保や健診機関は抵抗することが多いです。

その調整はお引き受けしますので、ぜひ、お任せください。


今こそ、胃がん撲滅プロジェクトで、もっとイケてる健康経営施策への予算を確保しましょう。 職場で胃がん撲滅プロジェクトを導入したい企業からのお問い合わせを、心からお待ちしております。



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