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Yoko Ishida

心陽クリニックのオンライン診療はBYOD

【BYOD】は【Bring Your Own Device】の頭文字を取ったもの。 このコラムでは、「スマホでもタブレットでもPCでも、使い慣れた好みの端末を、オンライン診療に使用してください」という意味です。


もちろん患者だけでなく医療者もそうですし、最近では産業保健業務も、ほとんどオンラインで行っています。

睡眠時無呼吸症候群のオンラインモニタリングは好みのデバイスにインストールしたアプリで寝室とクリニックをつなぎます。

医師会の偉い人は、「オンライン診療では、五感を使った診療ができない」とか、「BYODでは患者の安全が保たれない。しかるべき機関(医師会のこと)が認定した、『まともなデバイス』(医師会と癒着しているメーカーの商品?)で、医師の確認は日医資格証(医師免許とは関係なく、医師会に会費を払っている医者が発行料を払って手にする顔写真付き証明証)を使って行なうべし」とか発言します。


そこで心陽クリニックでも、いくつかのメーカーと契約はしたのですが、「先生になら渡せるけど、知らない業者にクレジットカードを教えたくない」とか、「クリニックに多めに払うならいいけど、診療代金は安くなって知らない業者にお金を払うのは嫌」とかいう意見が多くて、結局、BYODに落ち着きました。


オンライン診療にはよいところがたくさんありますが、その一つは、「医者と患者のアウェーとホームが入れ替わる」ことだと思います。


診療はエッセンシャルで、医師と患者双方の努力を要するものですが、特に非医療者である患者は、医療や医学をめちゃくちゃ難しくて神聖なものだと思っています。

自分の人生や命に関わることですし、実際に痛かったり辛かったりするので、そう思うのも当然です。神頼みならぬ、医者頼み的な気分になりがちです。

医療機関という聖域(?)に足を踏み入れ、医療者という聖職(?)とコミュニケーションをとるなんて緊張の極み、アウェー中のアウェーです。

もちろん、オフィスや家庭などの生活空間で外科手術はできませんが、生活習慣病の管理には利点ばかりです。オンライン診療では、医師にとってはアウェーになりますが、難解&聖域というダブルのアウェー・ストレスから開放され、ホームでリラックスしたありのままの患者さんから得られる豊富かつ良質な情報に加え、アウェー脳の発揮で医師の診療生産性が高まるというこちらもダブルの効果があります。


オンライン診療では、飲み忘れ、測り忘れを減らす薬や体温計・血圧計の置き場所の工夫、窓や空調の位置や種類を確認して、換気や温度調節、冷蔵庫にある食材や調味料で食生活など、さまざまなアドバイスが可能です。実際にやってみると、すごく便利です。

「今、どんな調味料があるの?」は、聖域でも何回でもアウェーでもない、「私の暮らし」に関する質問なので、世界で一番、上手に答えられます。


どこまでが自分自身か、どこまでが自分の体か、という哲学の大命題には、議論が尽きません。

「病気を診ずして病人を診よ」やナラティブベイスドメディスンという言葉があるように、医者の診察の対象だって、患者の肉体だけではなく、その生活、思想、価値観、生き様など多岐にわたる包括的なものです。

生活習慣や社会環境が病気の成因や経過、予後に大きな役割を果たすことが常識になっている現在、バイオ・サイコ・ソーシャルな診察を経て、バイオ・サイコ・ソーシャルな治療、処方を出す必要があります。


最も親しい家族や友人とのコミュニケーションで用いるデバイスを介するだけで、医者との距離が縮まり、ありのままの本音が出やすくなることは想像できますよね。

普段使っている(携帯電話でできて、家族とも使える)テレビ電話として、LINEなり、Skypeなり、Messengerなり、Signalなり、WhatsAppなり、ZOOMなり、MEETなり・・・を提案してくれるバックグラウンドには、それぞれのドラマがあり、それは本人の一部です。

使い慣れないスマホの操作を通して、新たに生まれる、世代の異なる家族やサポーターとのコミュニケーションが、また自身を形成していきます。

オンライン診療をはじめる前はその限界や欠点にいかに打ち勝つかを心配していました。対面診療に対して治療として劣る点はあれども利便性を重視し、対面診療の代替ではなく治療中断や放置の代替としてのオンライン診療に期待していたのです。 ところが、実際に行なってみると、患者さんの住む家庭、家族、家具、家屋を見て、働く職場を見て、家族や同僚との関係性を見て、日常生活でアクセスできる測定具はもちろん、さmざまな生活環境を見て、こんなに素晴らしい診療方法があったのかと驚きました。

ソクラテスもラマツィー二もスノーも賛同するでしょう。


2020年5月には、オンライン診療による生活習慣病のコントロール効果は対面診療に劣らないという科学的エビデンスを発表しました。共著者で、世界一賢い若手医師、原正彦先生のブログも参考にしてください。 現在は、同様に、オンライン産業保健と対面産業保健の比較研究を進めています。

コロナ禍は、世界の水準に向けて、利権のぶつかり合いで難渋していたオンライン診療を思いがけず進めてくれました。対面受診神話は急速に終りを迎え、医療サービスの提供者・利用者の双方が新しい価値を求めています。 現在、岐阜県知事に名乗りを上げたミスター健康経営、江崎禎秀氏のインタビューも参考にしてください。 「3時間待ち3分診療」という表現が出てきますが、現在私は、みっちり対話しっぱなしの産業医面談を「0時間待ち10分面談」×6時間を毎週こなしています。忙しいビジネスマンの対面面談キャンセル率は30~50%でしたが、オンラインでは0~5%です。 受付業務、待合室の設置、リスケのコストなど、多くの節約が実現しました。 同じことが診療でも可能だと考えています。

「信頼できる」(権威たっぷり利権にまみれた)デバイスを有償で用いるのも、この時代に、「五感を使ったエビデンスなき診療」にこだわるのも、よいでしょう。冒頭でお伝えしたとおり、診療には神頼み的な側面があるので、盲信している間は他の意見は聴きません。 ビジネスだろうと家事だろうと自分の時間を健康に効率よく投資したい、やらないよりましの治療を楽しい人生のための継続したい、もちろん、楽しい人生を創造するのは他人である医療者ではなく、私と私の仲間たち、とはいえ、専門家の意見は賢く利用したい、という方を心陽クリニックのオンライン診療はお待ちしております。

賛同する医療従事者、医療機関からのご相談も歓迎です。SHINEクリニック・パートナー・クリニックとして、ソーシャルビジネス、健康経営としてのクリニック経営を支援します。

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