先週1月31日金曜日に、一般社団法人日本睡眠協会(理事長:内村直尚日本睡眠学会理事長・久留米大学学長、以下「JSLEEP」)の、女性の健康と睡眠とのあいだの関係を分析・解明していく女性の睡眠ワーキンググループ(座長:八木朝子久留米大学医学部医療検査学科准教授)の第2回会合に出席し、内村先生の「女性のメンタルヘルスと睡眠」というタイトルの講演を聴いてきました。
内村先生に、「Dr. Yokoの睡眠マネジメント 眠るほど、ぐんぐん仕事がうまくいく」を謹呈したところ、 内村先生が、
「映画化されるかもしれないね」
と冗談をおっしゃったので、
「先生も登場しているので、その際は、出演してください」
とお願いして、OKをいただきました(笑)
「Dr. Yokoの睡眠マネジメント 眠るほど、ぐんぐん仕事がうまくいく」には、内村先生が中心になって作成した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」についてはもちろん、42から43ページに、私の大親分である内村先生が、日本の子どもの睡眠課題に憂いて、学校の始業時間を遅らせる提案をなさっているとを書きました。
内村先生はいつも、現状の課題に悲嘆やクレームをするのではなく、前向きな提言をし、まず自ら実践します。
たとえば、今回の女性の睡眠課題には、日本社会の環境要因が大きいことを指摘したうえで、育児休暇や介護休暇など、勤務先以外の場における役割を果たすための休暇を性別の関係なく奨励し、それができるだけ長くなければいけないと主張し、実際に久留米大学では大学病院の医師にも、最低3ヶ月取得することを推奨しているそうです。
「トップマネジメントが変わらないといけない」と、私も日々、口を酸っぱくして主張しますが、本当に行動できるトップマネジメントのいかに少ないことかと嘆いてもいます。
その点、内村先生は長崎大学で産後パパ育休取得第1号の長崎大学病院心臓血管外科教授の三浦崇先生を招いて久留米大学で講演してもらい、三浦先生の「休んでみて、いかにしなくてもいい仕事があるかに気づけた」という感想に注目し、学長(トップマネジメント)で現役医師で男性でありながら、大学病院の医師たちに育休取得を促します。ちなみに、なんと、1800年続く御勢大靈石神社の「宮司」でもあります。マルチタスクすぎます。(私の書籍が映画化されたら、これに俳優も加わるかも・・・)
感動したのは、3ヶ月休もうと、半年休もうと、現状では男性が主戦力になることはない、しかし、テンポラリーに育児や介護に参加し、そのポイントを学ぶことで、仕事に復帰したあとも、邪魔ではなくサポートができるレベルになることが期待できると話されていたことです。
そのタイミングでそんなことするくらいなら、帰ってきてくれないほうがよっぽどマシ、と言ったり、言われたりしたことがある人は多いのではないでしょうか。
そりゃそうです、ほんの週末、帰宅後、わずか1週間、「手伝うから教えてよ」と言われても、「おいおい、お前だって自分の仕事で、自分がやるより育成してやらせるほうが大変なの知ってるよな、ふざけてんのか?」と思いますよね。
男性の家事参加の意義は、パーフェクトな家事の担い手を目指すのではなく、ポイントで捉える、そして、大変さに気づき、主たるケアギバーに感謝し、労い、その仕事を減らすべく外注に頼る選択をすることです。あなたがサポートするより、プロがサポートしたほうが、誰にとってもベターです。
内村先生は、口先だけでDEIを語るのではなく、たとえば学内誌で、ダイバーシティとは何かと学生たちにインタビューして回るような懐の広さがあります。
女性のメンタルヘルスと睡眠より、内村先生ラブの内容になっていますが、まあ、まさに、いつもどおりのそういう講演でした。
実際に内村先生の専門である精神科領域の話は90分の講演中、ほぼなくて、社会人メインの参加者がすぐに行動できるような内容ばかりでした。
当然、精神医学と睡眠の関係は非常に奥深いのですが、自分の専門分野だとマニアックになりすぎると危惧されたのでしょうか、むしろ睡眠呼吸障害の話題に時間を割いてらっしゃいました。
内村先生の指摘されるように、女性の睡眠時無呼吸症候群は保険適用の尺度では重症にならないことが多く、臨床的適用を求められる部分が大きいのです。
アジア人の女性は睡眠時無呼吸症候群のリスクが非常に高く、更年期以降は、世界でもぶっちぎりに高いです。まずはご受診ください。心陽クリニックでは優しい女医が、初診からオンライン診療いたします。

個体差があるとはいえ、6時間未満の睡眠で充足する「ヒト」は、計算上、数%未満のはずなのに、働き盛りの日本の「ヒト」のうち、6時間未満が40%、年代によっては半分以上いるという恐ろしい事実を取り上げました。
睡眠外来の受診とか、睡眠障害の治療とか、睡眠リテラシーとか、偉そうなことを言う前に、「とにかく、たくさん、寝ろ」ってことです。みんな、もっと、長い時間、ベッドの中にいてください。
特に50代の睡眠衛生の悪さをご覧ください。
身に覚えのある方はぜひ、3月14日の【熟・睡】on World Sleep Day で、睡眠リテラシーを身に着けてください。
更年期の話もたくさん教えていただいたので、3月14日に皆様に還元します。
自分では調節のきかないホルモンバランスの変化は様々な症状をもたらします。その一つとして、「イライラする」という症状を内村先生が説明したところ、理事の安倍孝治さんが、わざわざ、「これまでは、妻の機嫌が悪いと思っていましたが、機嫌が悪いんじゃなくて、講演を聞いて不調なんだとわかりました。女性の皆さんにお願いします、男性にはわからないので、不機嫌じゃなくて不調なんだと言ってください」と得意げにコメントしていて面食らいました。
内村先生のDEIの本質を、もう少し理解してほしいです。こういうおじさんたちが、いつまでも男性優位社会を牽引するのでしょうね。
FBにも書きましたが、例の午前2時までの釈明会見もいっしょです。
というわけで、長くなりましたので、最後に子供の話題です。
母子手帳に睡眠の項目が追加されたのは、歓迎するべきなのですが、今後、5歳時健診にも睡眠項目を追加する予定です。小学生のうち、約10%が原発性の発達障害で、その50-70%に睡眠の課題があり、この兆候は5歳ではっきりと診断できるそうです。一方、現代の発達障害と発現型がそっくりな児童のうち、発達障害ではなく単純な睡眠不足の割合もどんどん増えているそうです。確かに、まれに22時くらいに帰宅するとき、まだまだ子どもがウロウロしているのにドキドキしてしまいます。50代の私も、普段は寝る時間なのに・・・
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