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石田陽子 Yoko Ishida

ナッジでわかる親の本心「介護のことになると親子はなぜすれ違うのか」

予約して買ったのに、やっと読みました。漫画を読む時間はあるのに・・・


とはいえ、読み始めたら、あれよあれよと一気に読みました。とてもおもしろかったです。


プロローグ


プロローグからすごく引き込まれました。


神戸貴子先生の指摘される通り、【家族の関係が悪くなること】が、介護があっても介護がなくても家族にとって最も大きな問題です。


そのシンプルな答えを最初に教えてもらうことで、そのあとのエピソードに自分なりの解決策を考えながら、とてもすんなり読み進めました。


鍋山祥子先生の【いまのように長期化・専門家した「高齢者介護」は、現代社会が生み出した、全く新しい現象です】というご指摘には、大いに納得しました。


似たようなことは、いかなる場面にも、非常に多いのです。


竹林正樹先生は、「現状維持バイアス」が手強い相手だと教えて下さいますが、私が現在、仕事として取り組んでいる、睡眠医療も、健康経営も、人的資本経営も、バーチャル企業内診療所も、現代社会に生まれてきた全く新しいアイデアなんです。


だから、「健康経営として、◯◯したほうがよいですよ」とお伝えして、「私達は、これまで△△でやってきたのに、それがだめだっていうんですか?(怒)」みたいな局面が非常にしばしばあるのですけれど、いやいや、これまでのあなたたちの素晴らしさと、これからの私たちの工夫というのは、両立できるのですよ、ということを伝えたい・・・そのためには、相手がこれまでの環境では、非常に適切であっただろう、自信を持ってやってきた実績を、まずは評価することから始めないといけないな、といつも思っています。


本当にいつも思っているのですが、ああああ~~~そんな正反対のことやったらもったいない~~~~と思うことも多くて、せっかちな私はいつも、周囲に落ち着いて、落ち着いて、、、と言われています。自分ではお客様に拙速は良くないなんて意見するんですけど、山廃せっかち人間なので、どうしても、ついつい、前のめります。

そんな私にとって、竹林先生は実にかけがえのない協業者です。


たとえば気温も年々というか、ここ数十年で極端に上がっていて、下の2つの図から分かる通り、昔の熱中症対策じゃ無理なんですよね。

私は小学生の時に、「心頭滅却すれば火もまた涼し」なんて言われて、真冬の乾布摩擦を強要されたんですが、今の時代なら、間違いなく虐待ですよね。。。


ナッジが有効なのは、こういう時代とともにマインドセットを変容しなければいけない場面だと思います。

おばあちゃんの知恵袋っていうのは、それはそれはプライスレスに素晴らしいものなんだけど、それに固執していると、その大切なおばあちゃんの生命が脅かされてしまうので、なんとか尊厳を保ちつつ、長生きしてほしい、そういう思いですよね。


【プライドが高い引きこもりの叔母・富江】


この本には、8人の被介護者をタイトルとするエピソードが出てくるのですが、最も身につまされたのが、富江さんのストーリーです。51ページには、2001年と2022年の主要なケアギバーの変化が図で示されていますが、20年前も今も、主力は第1位:配偶者、第2位:子、第3位:子の配偶者です。エピソードの中には、その役割神話にまつわるものもあるのですが、私は配偶者も子も、当然、子の配偶者も持たないので、「別居の家族等」である兄の長女に頼るしかないのです。。。彼女には、常に、私の老後について、できるだけ迷惑をかけないように気をつけはするものの、意識のない状態での手術同意など、万が一のときには、面倒をかけると伝えたうえで、ときどき美味しいものを食べさせて、関係をキープしています。

富江さんの姪、美佳ちゃんもとってもいい子で、ほんと、ごちそうしたくなります・・・

私にとっても、【他人のため】というワードは心をそそるので、次に姪に会ったときには、97ページに付箋を貼って渡そうと思います。

私と血がつながっているとは思えないほど、心優しく、弱者に優しい、よい娘なので、きっと頑なになった叔母・陽子の心をときほぐしてくれるはずです。頼むよ・・・


ひょんなことから、「非まじめ老後のすすめ」の大塚宣夫先生とお話する機会があって、そのときに大塚先生が、自分の親の介護をする野生動物なんていない、と教えて下さいました。

私たちは野生動物ではないので、野生動物を常に模範にする必要はなく、言い方を変えれば、「自分の親の介護をしないなんて、獣だ、畜生だ」という展開にもなりそうなんですが、「自分の親の介護について考える」だけでも十分、文化的だし、そのうえで冒頭の、【家族の関係が悪くなること】が最大悪であるという前提に立って、お互いが、人として尊重し合うことに尽きるのかな、と思います。


私は医者として世の中に対して役に立つことをしていると実感して気分がよい一方で、それが一銭の収入にもならないと、経営者として自分の無力にうちひしがれます。私を頼って、私のクリニックに通ってくださる皆様に対しても、ある日、破産したので診療はできません、と告げる未来は最悪の結末です。

結果、その未来は、【関係が悪くなること】につながっています。


私は動物が好きで、様々な種にそれぞれの社会性があると知っているので、人間だけがと言うつもりはありませんが、『関係を良くする』ために努力するというのは、社会的な動物だけができることですし、社会的な動物にとって、それ以上、大切なことはないのではないか、と思うのです。


介護を専門家に任されたくないと主張する方は、人に迷惑をかけたくない、おそらく社会において大いに価値のある専門家の時間を自分ごときに使ってもらっては申し訳ない、という気持ちもあるのではないかな、と思います。私は別の分野の専門家として、どんどんご依頼いただきたい、いっぱい仕事を作ってもらって、いっぱいお金を稼がせてもらいたいと思っています。

専門家はその専門性で社会の役に立ちたくて事業をしていますので、ぜひ、専門家のためにも家族のためにも、そしてやっぱり自分のためにも、専門家にご依頼ください。

きちんと報酬をいただきますので、ご安心ください。

そして、どんなに専門家をご活用いただいても、家族にしかできないケアはあります。家族の有限な時間を家族にしかできないケアに使っていただくためにも、専門家をご利用ください。


介護を専門家に依頼することは、社会を活性化し、誰かのためになることです。なーんて言っても、実の父は【昭】のように、外面がすごく良いタイプで、現在、なだめすかして、専門家の手を入れようとしているところです。

ただ、【自信過剰バイアス】はむしろ、母のほうが心配で、それが父の介護にも影響してきそうだなと思っています。

とはいえ、まだ、両親とも自立していますので、これからナッジを念頭に置いて、寄り添おうと思います。

介護のことじゃなくっても、50年以上すれ違ったことしかないのですが、私も頑張ります。

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